橋本愛が渋沢栄一の妻になる尾高千代を演じる
「父様は前々から武州藍を日本一にしようとたくらんでいる。来年も高めあっていい藍を作り武州藍を大いに盛り上げたいと思っている」
「一橋様が将軍におなりに遊ばせばきっと乱れたこの世を立て直すことができる」
「母様姉様が育てているお蚕さんは一ヶ月寝ずに繭をとって一つかみでせいぜい一文だ」
人間の関係を暗示するふとした一言や感情の機微を表すセリフよりも、どうしても状況説明が目立つ印象です。最初から全てを正しく伝えなくては、という意識を感じるのです。
しかし、視聴者は最初から正確に全てを知らなくても、時代や出来事が細かく把握できなくても大丈夫。特にこの物語は「日本の資本主義の父」という背骨が1本通っているし、役者が画面の中で活き活きと魅力的に躍動してくれれば、視聴者もついていくことができます。
今世界的に人気を博している数々の海外ドラマを見てみると、長いシーズンの冒頭の話がわかりにくいのはいわば当たり前。その多くが最初の数話を見ただけでは何を描いているのか正確にわからない。わからない部分も残しつつ、まずは登場人物のキャラクターを際立たせ固有の世界観を表現し、視聴者の方も徐々に筋立てを掴んでいく。むしろ手探りでドラマ世界に入り少しずつわかるプロセスを楽しんでいる……。
そのあたり、日本の大河ドラマももう少し学んでいいのではないでしょうか? キラ星のキャスティングなのに、役者たちにくだくだと説明を語らせるのはあまりにもったいない。しかも、脚本担当は大評判をとった朝ドラ『あさが来た』の大森美香さんです。個々の役者の魅力が際立ってくるような言葉を、ぜひたくさん書いて欲しい。期待しています。