運転支援のトップランナー「アイサイトX」にも弱点
遠乗りに向いていたもうひとつのファクターとして印象深かったのは、フロントシートである。
セミバケット形状の前席。STIは2トーンカラーのレザー表皮
スポーティカーによくある体のホールド性重視のセミバケット形状なのだが、横Gがかかったときの体重の受け止めはとてもナチュラルに仕上がっており、シートに体を預けたままリラックスして走っても、ほどんどの場面で体の軸線がブレずに済んだ。この体の軸線の安定はロングドライブでの疲れの大小に直結する部分なので、好感を持った。
次に鳴り物入りの運転支援システム、アイサイトXについて。準天頂衛星まで使うというこのシステム、現状では自動車専用道路ならどこでも半自動で走るレベルにまでは達していないが、それでも現行の市販車のトップランナーのひとつと言って問題ない。
鳴り物入りのアイサイトX。操作性は普通のクルーズコントロールとほとんど同じ
操作は非常に簡単で、車線変更の時には方向指示器を出せばステアリングがちゃんと車線移動するようにアシストしてくれるし、後方から速いクルマが接近していれば、それを待ってくれる。そのあたりの見逃しはゼロだった。
素晴らしかったのは使っている人間にストレスを与えないような作り込みがなされていたことだ。
高速走行時、前を走っているクルマがどいたときに設定値まで車速を回復させるべく加速を始めるまでのタイムラグは、ライバルのシステムの中でもブッチギリに短い。人間がよし大丈夫と思って加速するタイミングとほぼ同一と言ってよさそうだった。他車の割り込みの監視も優秀で、少なくとも今回の1000kmツーリングの中で急ブレーキがかかったりするようなシーンは皆無だった。
前方カメラがカラー化され、信号も検出するようになった。青信号でモタモタしていると注意を促してくれる
完全でないと書いたのは、まず、車線が消えているか、ほとんどかすれているような状況になるとさすがに無力であるということ。こういう環境は北国では案外多く、今回走った中でも福島から山形へ向かう東北中央自動車道の山間部ではそういう箇所が頻々とあった。除雪しても後から後から雪が降り積もるような気象状況でも同じことだろう。
もうひとつの弱点は、高速道路の流出路のラインの引き方によって、時々流出方向に引っ張られる動きを見せたこと。日本は世界の先進国の中でも道路の作りや表示がきちんと統一されていない国で、クルマ側が対処しなければならないパラメーターはきわめて多い。難しいのは百も承知だが、引き寄せられるときのインターチェンジの構造はおおむね決まっていた気がするので、どんどん改良を重ねてほしいところだ。
除雪の状況によってアイサイトXの高度運転支援がきかない局面もあったが、この程度整備されていれば何の問題もなし