熱効率が高い割には期待外れな「燃費性能」
これら、車体側や電子装備の素晴らしさに比べ、冴えなかったのはパワートレインである。スバルは昨年、このレヴォーグでデビューさせた完全新設計の水平対向1.8リットルターボエンジンに関する技術発表を行っており、筆者もそれに参加していた。
新開発の水平対向1.8リットルターボ(スバル レヴォーグ)
その時の説明では、この1.8リットルターボはリーン燃焼(吸い込んだ空気とガソリンの混合気が燃えた時、酸素が余る状態)でも異常燃焼を起こさず、ターボエンジンであるにもかかわらず熱効率が非常に高い(最大熱効率40%と主張していた)のだという。
最高熱効率40%といえば、トヨタ「カムリ」のアメリカモデルなどと並び、非ハイブリッド用ガソリンエンジンとしてはトップクラスなのだが、ツーリング中の実走燃費は、雪道走行で燃費を落とした区間があったことを加味しても40%とはちょっと思えないリザルトに終わった。仮に40%を達成していたとしても、その領域がものすごく狭く、アベレージでのパフォーマンスが凡庸に終わったと考えられる。
東京・葛飾で満タン給油後、東北を巡った後に途中で一度給油しつつ同じ給油所に戻ってくるまで956.0km走行し、給油量は合計63.43リットル。燃費は約15.1km/Lだった。
燃費計の挙動からあまり燃費が伸びなさそうだと旅の序盤で悟り、チンタラ走りとは言わないまでも普段よりもかなり大人しめに走ってこの数値というのは、正直期待外れであった。ちなみに筆者は第1世代モデルの1.6リットルターボ車で一度ロングツーリングを行っているが、その時の燃費値は今回とほぼ同じであった。
スバル新型レヴォーグ(STI Sport EX)
いま、世界は電動化に超前のめりになっている。スバルは2000年代、BEV(バッテリー電気自動車)の研究を盛んに行っていた。日産自動車のリチウムポリマー電池はもともとスバルとNECが研究していたものだ。経営危機でトヨタの出資を仰いだのを境にそれを途中で放棄せざるを得なくなったという歴史を持つ。
それから十余年、こんな時代が到来したことにスバルとしてはほぞを噛む思いであろうが、覆水盆に還らず。電動パワートレインを手にするまでは普通のエンジン車でできるだけ低CO2を進めなければならない。であればこそ、新エンジン一発目でトップランナーとはいかずとも、世間一般のユーザーが「ほう、スバルもなかなかやるね」というくらいの燃費性能は出してほしかったところだ。
エンジンパワーは130kW(177ps)。旧型の1.6リットルターボの125kW(170ps)より少し強力、2.0ターボの221kW(300ps)には遠く及ばないという数値である。速度レンジが低い日本の公道では普通に速く走るにはこれだけパワーがあれば十分すぎるというものだが、過剰性を求めるユーザーのニーズを満たすには性能不足だ。
道中、合法的に発進加速できる場所でGPSを用いて計測した0-100km/h加速の実測値は、発進前の予備ブーストなしで7.9秒であった。