放送がなかったのは、震災絡みの特集を組んだ10日(水)のみでした。また、3月4日の「差し入れの日」には、「人気俳優たちに聞く現場の絶品差し入れ」という特集が組まれ、菅野美穂さん、浜辺美波さん、竹内涼真さん、中条あやみさん、松下奈緒さんらが登場。グルメを中心に、このようなタレントやアーティストの登場するコーナーも目立ちます。
このほかにも、毎日9時50分前後から放送されている“天の声(山里亮太)”によるレギュラーエンタメコーナー「クイズッス」も健在。『スッキリ』のエンタメコーナーは、すでに情報番組のレベルを超えるほどの充実ぶりを見せていますが、なぜここまでこだわって強化しているのでしょうか。
新番組スタート前の先制パンチに
昨春、視聴率調査がリニューアルされたことで、民放各局は商品購買行動が盛んでスポンサー受けのいい10~40代に向けた番組制作をはじめています。ただ日本テレビは例外で、他局に先がける形で10~40代に向けた番組制作を2010年代から進めていました。だから『スッキリ』はエンタメを筆頭に若年層や若い主婦向けのコーナーが多かったのです。
また、昨秋には「今、バズっている人、注目のニューカマーを紹介する」というコンセプトの『BUZZ-P』というコーナーを新設してエンタメ強度がアップ。さらに、冒頭に挙げた最近のエンタメコーナー量産は「もう一段階ギアを上げた」という印象があります。
エンタメ特集の内容に注目してみると、ネット上の流行に敏感であるほか、韓国アーティストの登場頻度が高いなど、10~20代の行動や嗜好に合わせたものが多く、「ウチはここまでやりますよ」という他局への先制パンチの意味合いがあるのかもしれません。長年、朝は若年層が「特に見たい番組がない」と不満をこぼす時間帯であり、日本テレビと『スッキリ』はその解消に向けて動いているようにも見えるのです。
さらに、もう1つ忘れてはいけないのが他局の動き。今春、『とくダネ!』に代わって『めざまし8』(フジテレビ系)、『グッとラック!』に代わって『ラヴィット!』がスタートします。
それぞれMCを務める谷原章介さん、麒麟・川島明さんは、ともに穏やかな印象と美声で女性からの好感度が高いだけに、『とくダネ!』『グッとラック!』以上に視聴者層がかぶりかねないライバル。『スッキリ』も同じ時期にMCの入れ替えがありますが、その前に「エンタメならウチ」と先手を打つ形で視聴者にアピールしているように見えるのです。
近江友里恵アナに代わって鈴木奈穂子アナがMCに就任する『あさイチ』(NHK)も含めて今春は8時台の番組が大きく動き、新たな局面に突入。『めざまし8』『ラヴィット!』『あさイチ』、どれもエンタメを扱う番組だけに、『スッキリ』が先行して差別化を図る理由がわかるのではないでしょうか。