門脇の起用理由について岨手監督は、「私が門脇さんを一番最初に意識したのは、とあるCMでのバレリーナ姿でした。そのイメージがあるからか、彼女が庶民的な役を演じていてもどこか品を感じる。だからこそ華子役は門脇さんがいいなと」と述べている。また水原に関しては、「水原さんはオピニオンリーダーですし、“サバイブしてきた人”という印象があるんです。その点が美紀役にフィットするなと思いました」と、起用理由を明かしている。

 この岨手監督の発言には大いに納得するとともに、上辺だけのイメージで2人の俳優を捉えてきたことを筆者自身恥ずかしく思った。いくら華やかに見える存在でも、そこに至るまでにどんな苦労があったのかは人それぞれで、ある程度の成功を得ても、さらにそこから生き残っていかなければならない。これは何の世界においても言えることだ。また、一つのイメージにはめこむことは、俳優である彼女たちの表現の幅も狭めてしまいかねない。本作は岨手監督の視野の広さと洞察力の高さの勝利と言えるだろう。今後こうしたキャスティング法の作品が増えるべきだと強く感じた。

 実際、2人の演技はともに素晴らしい。門脇は控えめで“一歩後ろを歩く”女性像を丁寧に演じ、水原の演技は、東京で生きるため必死に生き、ときに余裕のなさを感じさせる表情が印象的だ。庶民側である筆者は門脇のような人物と普段交流は無いが、彼女の所作の一つひとつの美しさには真実味を感じたし、一方の水原のような人間には筆者自身多く出会い、筆者もまたどうにかサバイブしている側の人間だから、水原の細かな表情に共感した。門脇と水原は、両者の表情や佇まいの対比を上手く演じ、現代社会の階級構造を自然かつリアルに体現していた。

 本作で描かれているのは、住む世界の異なる2人の女性が、恋愛や結婚だけでなく真の意味で人生を切り拓いていくさま。他者からのイメージやしきたりに縛られず、“自分の道”を見つけて変化していく華子と美紀の関係は、門脇と水原の組み合わせだからこそ成立したのだと思う。

【折田侑駿】
文筆家。1990年生まれ。映画や演劇、俳優、文学、服飾、酒場など幅広くカバーし、映画の劇場パンフレットに多数寄稿のほか、映画トーク番組「活弁シネマ倶楽部」ではMCを務めている。

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