芝生の上に敷かれた大風呂敷(撮影:梅原渉)

 プロジェクトのメンバーである建築家・アサノコウタと美術家・中崎透のアイデアをもとに、セシウム対策のシートとして使用できるよう、全国各地から届いた色もデザインも多種多様な布を縫い合わせた巨大な風呂敷を制作。「福島大風呂敷」と名付けられたこのユニークな風呂敷は、その後プロジェクトを象徴するアイテムの一つとして使われるようになっていく。

プロジェクトの広がりと「続けよう」という試み

 延べ1万3000人の観客を集めた2011年8月15日のフェスティバルFUKUSHIMA!では、著名なミュージシャンから地元の子供たちまで様々な出演者がパフォーマンスを披露。国内外のイベントとも連携し、世界各地で約90件のイベントが開催された。この間の経緯は美術家で映像作家の藤井光によるドキュメンタリー映画『プロジェクトFUKUSHIMA!』にも収録されている。

 翌2012年には8月15日から12日間にわたって国内外で100件以上のイベントを開催。だが大規模な音楽フェスティバルを毎年趣向を変えて継続することは容易ではない。そうした中、2013年から新しい試みが始まった。盆踊りである。原発事故を受けて避難していた住民が、地元ではない場所で地元の盆踊りを楽しむ姿に接して、可能性を感じた遠藤ミチロウが提案したのだという。

 こうして歌詞・楽曲・踊りが全てオリジナルの「ええじゃないか音頭」が誕生し、盆踊りはプロジェクトFUKUSHIMA!を象徴する催しの一つとなっていく。2013年のフェスティバルを終えた山岸さんも「これなら毎年できる」と感じたそうだ。だが2014年、共同代表の遠藤ミチロウが体調不良で入院。プロジェクトの継続自体が危ぶまれるようになっていった。

 もしかしたら、2014年の時点でプロジェクト自体が終了していたかもしれない。しかしここで活動を途切れさせてはならないと感じた山岸さんは、2015年に代表の座を引き継ぐことを決意する。

「3.11をきっかけに始まったことが、ちょうど広がり始めた時期だったんです。各地の芸術祭とも連携して、名古屋や池袋、札幌など福島県外でもフェスティバルFUKUSHIMA!を開催するようになっていましたからね。

 当初はそれこそ音楽フェスみたいな感じで、県外からミュージシャンがやってきて音楽を奏でるというのが中心だったんですけど、2013年に盆踊りをやり始めて、『ええじゃないか音頭』という自分たちで作ったオリジナルの音頭が生まれました。あとはセシウム対策として作った『大風呂敷』が、祭りの場を彩るヴィジュアル・イメージとしてプロジェクトを象徴するものになっていました。

 そんな風に、福島発の文化が各地に広がっていて、何かが生まれる芽が出来始めているような感覚があったんです。3.11をきっかけに福島で豊かな面白い文化が生まれたら、ネガティブな『FUKUSHIMA』という言葉をポジティブに転換していくこともできる。これをなんとか続けて、この先まで進めていきたいと思って代表を引き継ぐことにしました」(山岸さん)

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