活動の支えになった3つの作品
新たに山岸さんが代表となったプロジェクトFUKUSHIMA!は、2015年以降もビッグバンドの生演奏による盆踊りという形式で毎年フェスティバルを開催し続けた。2019年には福島市の“メインストリーム”というべき夏祭り「福島わらじまつり」とコラボレーションを果たし、祭りのリニューアルにあたって総合プロデューサーを務めていた大友良英と共同でプロデュースを手がけた。
フェスティバルを継続する中で、参加者も徐々に増えていったと山岸さんは言う。
「回を重ねると毎年来てくれる人も増えていきますし、顔を合わせると『あ、1年経ったな』って思うようになるんですよ。福島出身ではない人もいるんですが、お盆の時期ということもあってか、ある種の故郷に帰るという気分でフェスに参加してくださる人もいるようです。特に2019年はわらじまつりと一緒にフェスティバルFUKUSHIMA!を開催したこともあって、これまで来たことがなかったという人もたくさんいましたね」
10年にわたってプロジェクトFUKUSHIMA!の活動を続ける中で、山岸さんは3つの作品にことあるごとに助けられてきたという。プロジェクト発足時の共同代表で2019年に他界した遠藤ミチロウの『FUKUSHIMA』、漫画家・しりあがり寿の『あの日からのマンガ』、そして写真家・広川泰士の『Still Crazy 原発 53基の原子炉』である。
「『FUKUSHIMA』は僕が代表を引き継いだ2015年にリリースされたアルバムなんですが、やっぱりミチロウさんのアティテュードにはものすごく影響を受けました。『インディペンデントに一人でやっていく』ということが、ギターを持って歌う姿からも伝わってくる。彼にしか出来ないことだし、僕の中には全然ない部分なんですよね。
それと、しりあがり寿さんの『あの日からのマンガ』は、毎年3.11が近くなると読みたくなる作品なんです。脱力感があって、ミチロウさんとはまたタイプの異なる魅力があるんですが、この10年間プロジェクトを続ける上ですごく助けられたなと感じていて。
あと3.11の前に購入した『Still Crazy 原発 53基の原子炉』という写真集があって、いつも目の前の本棚に置いていたんですが、あんまり理解していなかったんです。それが3.11の後にあらためて読み直してみたら、『知らないことがこんなにたくさんあったのか!』と目を見開かされたと言いますか、見え方がガラリと変わりました」(山岸さん)