2018年のフェスティバルFUKUSHIMA!(撮影:木下真理子)

2018年のフェスティバルFUKUSHIMA!(撮影:木下真理子)

そして次の10年へ──

 3.11以降、毎年開催してきたフェスティバルFUKUSHIMA!だが、2020年は新型コロナウイルスの影響で中止を余儀なくされた。盆踊りという、人々が密集し合うことの魅力に満ちたイベントは、震災や原発事故とは全く別の困難に直面している。

 そうした中、プロジェクトFUKUSHIMA!は別の仕方でイベントを実施。今年2月にオンライン・イベントを配信したほか、2月から3月にかけて福島市内のギャラリーでプロジェクトの足跡を振り返る展覧会を開催した。この展覧会はプロジェクトの アーカイブ化に向けた第一歩でもあると山岸さんは説明する。

「毎年開催してきたフェスティバルがコロナ禍で出来なくなってしまい、どうしようかとみんなで悩んでいた時に出てきたアイデアが展覧会でした。展覧会であれば、3密を避けて開催することができる。それで、どうせやるのであればプロジェクトのアーカイブ化に向けた展覧会をやろうと思ったんです。

 もともとアーカイブをパッケージとして出そうという思いはあったんですが、毎年フェスティバルを開催していることもあって、そこまで手が回らなかった。なのでコロナ禍を機に、書籍やDVDとしてプロジェクトの記録を残すことができればと今は考えています」

 アーカイブ化を進めているとはいえ、「『FUKUSHIMA』をポジティブに転換する」というプロジェクトの活動自体に終わりが見えてきたわけではない。山岸さんは続ける。

「もちろん、『FUKUSHIMA』をポジティブに見てくれるようになった人も増えたとは思います。けれどもマクロなレベルで見ればネガティブなイメージの方が強いですし、色々な問題がまだ全然片付いていないですよね。

 フェスティバルFUKUSHIMA!は福島市の“中通り”という原発から50キロ以上離れているところでやることが多いんですが、より原発に近い“浜通り”には現在も帰還困難区域の場所がありますし、10年経ってもまだまだこれからだと感じています。

 やっぱりすぐには変わらないです。原発事故のような人災を引き起こした戦後の社会構造が変化したかというと、そんなこともない。とはいえ、プロジェクトを続ける中で色々なネットワークが生まれてきたので、僕らなりのやり方をこれからも続けていこうと思っています。福島から面白い文化を発信していきたいですね」

 今や3.11をリアルタイムには知らない子供たちが、「大風呂敷」のイメージに接したり「ええじゃないか音頭」で踊ったりする時代になりつつある。それらはおそらく、とてもポジティブな記憶として刻まれているはずだ。その意味でも、単発のフェスティバルとして終わることなく、プロジェクトFUKUSHIMA!がサステナブルに活動を継続していることは、もっと評価されてしかるべきだと言えるのではないか。

◆取材・文/細田成嗣(HEW)

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