●自動運転システム利用中の事故では、運転者は運行の注意を怠ったといえないのではないか?
自動運転システム利用中は、自動車の運行をシステムに委ねているため、運行供用者は運行の注意を怠ったといえないのではないか、という議論だ。注意を怠らなかったことは、自賠法で賠償責任が免責とされるための要件の1つであるため、重要な論点といえる。
結論は、自動運転中は運転に関する注意義務は軽減される可能性があるが、システムのソフトやデータのアップデートなどの他の注意義務が大きくなる可能性があり、自動運転技術の進展などに応じた注意義務を新たに負うことも考えられるとされた。
●外部データの誤謬や通信遮断による事故は、「構造上の欠陥または機能の障害」といえるか?
自動運転システム利用中に、地図情報等の外部データが誤っていたり、通信ができなかったりしたために事故が発生したとする。この場合、自動車そのものの欠陥といえるだろうか?
結論は、外部データの誤謬や通信遮断等の事態が発生したとしても安全に運行できるべきであり、こうした安全性が確保されないシステムは、「構造上の欠陥または機能の障害」があると評価されうるとされた。
迅速な被害者救済のため損保会社が無料提供する「特約」
現在、損保会社は自動車保険につける無料の「被害者救済費用補償特約」を提供している。
既存の自動車保険では、事故での運転者や保有者の責任の有無や、その割合が確定するまで、保険会社からの被害者対応は行われない。
自動運転の場合、事故の責任関係が当事者(運転者・被害者)だけではなく、メーカーやソフトウェア事業者にまで及ぶ可能性があるため、被害者の補償が遅れてしまうことが懸念された。この特約を付けることで、迅速な被害者救済が可能となる。
【被害者救済費用特約の補償内容(例)】
ご契約されているお車の欠陥やハッキングなどを原因とする事故により、乗車中の方や歩行者などを死傷させ、または相手方のお車や他人の財物に損害を与え、補償の対象となる方が法律上の賠償責任を負わない場合に、保険金をお支払いします。ただし、欠陥やハッキングなどの事実がリコールや警察の捜査などの客観的な事実により確認できる場合に限ります。
※イーデザイン損保の「自動車保険 用語集『被害者救済費用等補償特約』」より