ビジネス

ユニクロ1強時代に考える 薄れゆく「ファッションへの渇望」

東京・銀座にあるユニクロの旗艦店(時事通信フォト)

東京・銀座にあるユニクロの旗艦店(時事通信フォト)

 ユニクロを展開するファーストリテイリングが、フリマアプリのメルカリと包括協定を結び、商品の高額転売対策を始めている。もともと低価格ファッションが人気を集めているユニクロだが、どうしてここまで商品の売買が過熱するのか──。ファッションジャーナリストの南充浩氏が考察する。

 * * *
 3月19日、ユニクロとジル・サンダー氏のコラボライン「+J」の2021年春夏ラインが発売されました。2020年11月に9年ぶりに復活したコラボラインでしたが、復活第1弾の人気は前回終了時をはるかに超えました。

 +Jは2009年にスタート。それまでユニクロは「デザイナーズインビテーション」と銘打って期間限定で数型程度をデザイナーブランドとコラボしていたことはありましたが、期間限定ではなくフルライン展開する本格コラボは初めてのことでした。

 この時も発売当日は大いに話題となり集客に成功しましたが、2020年の復活は、当時に比べると体感的に何倍もの集客となりました。

 +J発売当日の各店舗の混乱ぶりが報道されるのを見て、「そこまで客が集まるのか」と正直驚きました。旗艦店にはある程度商品が残っていましたが、それ以外の実店舗でも短期間に売り切れた品番は多く見られました。また、通販サイトでもほとんどのアイテムがあっという間に完売してしまいました。

「+J」高額転売対策は奏功したのか

 何よりも驚かされたのが、フリマアプリのメルカリです。メルカリでは+Jが定価の2倍~4倍くらいの価格で多数出品されているだけでなく、完売している物も珍しくなかったのです。そこまでして買いたい人が多かったのでしょう。

 例えば定価2万5000円くらいのコートがありましたが、これが5万円台とか10万円くらいで出品されていました。個人的には10万円も支払えるなら、その金額で他ブランドの“正式に”10万円するコートを買ったほうが断然良いと思いましたが……。

 前回の混乱を避けたいと考えたのか、今回はメルカリとファーストリテイリングが包括連携協定を締結し、発売直前に発表しました。要するに前回のような異常な値段設定の転売をなくすことが目的だったと考えられます。それが奏功したのか、実際にメルカリを見てみると驚くほどの高値で取引されている+Jは目にしません。

 もっともアパレル業界全体として、春夏服は秋冬服に比べて値打ちを出しにくいという部分も大きかったと思います。秋冬服だとカシミヤ、ダウン、ウールと「高額素材」品が目白押しです。またコート、ダウンジャケットなどの「単価の高い重衣料」が主力となります。

 一方、春夏の主力素材は綿や麻や吸水速乾の合繊となり、高額素材もあるものの、総じて低価格素材です。またアイテムとしてTシャツ、ポロシャツ、半袖シャツなどの「単価の低い軽衣料」が中心になってしまいます。ですから、+Jといえども春夏服のほうが過熱しにくかったのではないかと思います。

 とはいえ、今回も発売当日は朝4時から並んだという人もいましたし、ユニクロの通販サイトでも一瞬で完売した品番もあったので、「+J人気恐るべし」という点は変わりません。

関連キーワード

関連記事

トピックス

初の海外公務を行う予定の愛子さま(写真/共同通信社 )
愛子さま、インスタに投稿されたプライベート感の強い海水浴写真に注目集まる “いいね”は52万件以上 日赤での勤務をおろそかにすることなく公務に邁進
女性セブン
岐路に立たされている田久保眞紀・伊東市長(共同通信)
“田久保派”の元静岡県知事選候補者が証言する “あわや学歴詐称エピソード”「私も〈大卒〉と勝手に書かれた。それくらいアバウト」《伊東市長・学歴詐称疑惑》
NEWSポストセブン
2021年に裁判資料として公開されたアンドルー王子、ヴァージニア・ジュフリー氏の写真(時事通信フォト)
「少女を島に引き入れ売春斡旋した」悪名高い“ロリータ・エクスプレス”にトランプ大統領は乗ったのか《エプスタイン事件の被害者らが「独自の顧客リスト」作成を宣言》
NEWSポストセブン
東京地裁
“史上最悪の少年犯罪”「女子高生コンクリート詰め事件」逮捕されたカズキ(仮名)が語った信じがたい凌辱行為の全容「女性は恐怖のあまり、殴られるままだった」
NEWSポストセブン
「高級老人ホーム」に入居したある70代・富裕層男性の末路とは…(写真/イメージマート)
【1500万円が戻ってこない…】「高級老人ホーム」に入居したある70代・富裕層男性の末路「経歴自慢をする人々に囲まれ、次第に疲弊して…」
NEWSポストセブン
橋幸夫さんが亡くなった(時事通信フォト)
《「御三家」橋幸夫さん逝去》最後まで愛した荒川区東尾久…体調不良に悩まされながらも参加続けていた“故郷のお祭り”
NEWSポストセブン
麻原が「空中浮揚」したとする写真(公安調査庁「内外情勢の回顧と展望」より)
《ホーリーネームは「ヤソーダラー」》オウム真理教・麻原彰晃の妻、「アレフから送金された資金を管理」と公安が認定 アレフの拠点には「麻原の写真」や教材が多数保管
NEWSポストセブン
”辞めるのやめた”宣言の裏にはある女性支援者の存在があった(共同通信)
「(市議会解散)あれは彼女のシナリオどおりです」伊東市“田久保市長派”の女性実業家が明かす田久保市長の“思惑”「市長に『いま辞めないで』と言ったのは私」
NEWSポストセブン
二刀流復帰は家族のサポートなしにはあり得なかった(getty image/共同通信)
《プールサイドで日向ぼっこ…真美子さんとの幸せ時間》大谷翔平を支える“お店クオリティの料理” 二刀流復帰後に変化した家事の比重…屋外テラスで過ごすLAの夏
NEWSポストセブン
左から広陵高校の34歳新監督・松本氏と新部長・瀧口氏
《広陵高校・暴力問題》謹慎処分のコーチに加え「残りのコーチ2人も退任」していた 中井監督、部長も退任で野球経験のある指導者は「34歳新監督のみ」 160人の部員を指導できるのか
NEWSポストセブン
鉄板焼きデートが目撃されたKing & Princeの永瀬廉、浜辺美波
《デートではお揃い服》お泊まり報道の永瀬廉と浜辺美波、「24時間テレビ」放送中に配慮が見られた“チャリT”のカラー問題
NEWSポストセブン
サントリー新浪剛史会長が辞任したことを発表した(X、時事通信フォト)
大麻成分疑いで“ガサ入れ”があったサントリー・新浪剛史元会長の超高級港区マンション「かつては最上階にカルロス・ゴーンさんも住んでいた」
NEWSポストセブン