漫画家の小林よしのり氏(撮影:太田真三)
宮沢:医学の世界の感染症専門家って、「感染症を治す専門家」じゃないですか。医者というのは、ヒトの症状を治す専門家ですよね。そのウイルスをもつ動物や、感染の現場を突き止めるとか、感染を止めるのは、獣医の仕事なんですね。だから、キャバクラ、ホストクラブなどに実際に行って、どういう状況で感染しているか調べるんですよ。
そしたら、お医者さんから「宮沢君、そんなことやってるよりも、論文読んでるほうが勉強になるだろう」って言われるんです。いや、論文読んでても、感染してる現場を見ないと何にもわからないんですよ。さらにお医者さんから「宮沢君、病院に行け。病院を見ればどんなに大変かわかる」って言われる。違う、私たちは、感染が起こっている現場を知りたいんやという話でね。病院が大変なのはわかっていますが、病院行って治療の現場見たって、感染拡大を止める役に立たないでしょうって。
小林:そりゃそうだよな。
宮沢:現場でどういうふうに感染が起きているのかが知りたいんです、リアルで。だから、キャバクラやホストクラブに行って調査するのは当たり前じゃないかと。文献読んだってわかるわけない。医者も現場に出てこいよ。現場はどこなんだ、病院ちゃうやろ。
小林:「踊る大捜査線」みたいだな(笑)。
でも、そういうことは外部の人間にはまったくわからないからなあ。感染症の専門家だと言われたら、コロナウイルスにも詳しいと思っちゃうよね。
※小林よしのり、宮沢孝幸の共著『コロナ脳 日本人はデマに殺される』(小学館新書)より一部抜粋・再構成
【プロフィール】
小林よしのり(こばやし・よしのり)/1953年福岡県生まれ。漫画家。『東大一直線』でデビュー。『おぼっちゃまくん』でギャグ漫画に旋風を巻き起こす。92年スタートの「ゴーマニズム宣言」は新しい社会派漫画、思想漫画として話題に。近著に、『コロナ論』など。
宮沢孝幸(みやざわ・たかゆき)/1964年東京都生まれ。兵庫県西宮市出身。東京大学農学部獣医畜産医学科、東京大学大学院農学生命科学研究科博士課程獣医学専攻修了。獣医学博士。現在、京都大学ウイルス・再生医科学研究所 ウイルス共進化分野准教授。