今の時代、これほど敵意剥き出しの好敵手は存在しないだろう。2人の争いが、近代日本の基礎を築いた側面は無視できない。猪瀬氏は言う。
「郊外に土地を購入したサラリーマンが満員電車に揺られて都心に出勤し、ターミナル駅の池袋や新宿、渋谷を利用する。そこにあるデパートで、多くの人がレジャーやショッピングを満喫する。そして、沿線郊外に作られた大きな遊園地で、家族が週末を過ごす。堤と五島は、こうした昭和から現在まで続くライフスタイルを作り上げた。
ユニクロの柳井正やソフトバンクの孫正義のようにライフスタイルを商品化することに成功した経営者は現代にも多くいる。しかしながら、ライフスタイルそのものを変えるダイナミズムを持った人間はこの2人以降、現われていない」
※週刊ポスト2021年4月16・23日号