中国政府が新疆ウイグル自治区で100万人以上のウイグル族を強制収容施設に送り、強制労働や拷問、女性への不妊手術など弾圧を続けているとされる問題について、米バイデン政権は3月30日、「ジェノサイド(民族大量虐殺)が行なわれている」とする調査報告書を発表。
米、英、カナダと独、仏、伊などEU(欧州連合)は制裁に踏み切り、オーストラリアとニュージーランドも制裁賛成の共同声明を出している。
ところが、日本政府は口先で「(欧米と)考え方は完全に共有している」(茂木敏充・外相)、「深刻な懸念」(加藤勝信・官房長官)を表明しただけで、G7(主要7か国)の中で唯一、制裁に加わっていない。
米国はそんな日本のご都合主義を許さない構えだ。自民党防衛族議員が語る。
「中国は尖閣諸島周辺への領海侵犯を繰り返して日本にも圧力をかけている。政府は米国に首脳会談の共同声明で『尖閣が日米安保条約5条の対象である』と明記するように求めている。
尖閣を侵略すれば米軍が出てくるとわかれば中国への抑止力になるからだが、米国側は代わりにウイグルの人権問題で優柔不断な日本に制裁参加を要求してきた。外務省は頭を抱えている」
“米軍に尖閣を守ってもらいたいなら、人権問題でも制裁に加われ”というのである。
二階がコワイ
それでも菅首相は及び腰だ。加藤官房長官は制裁ができない理由について、「現行の外為法(外国為替及び外国貿易法)に人権問題のみを直接、あるいは明示的な理由として制裁を実施する規定はない」と“法の不備”をあげているが、言い逃れに過ぎない。日本はかつて同法を根拠に人種隔離政策を取る南アフリカに経済制裁を実施したことがある。
菅政権が及び腰な本当の理由は、与党内に制裁に極めて慎重な二階俊博・自民党幹事長と公明党という頑強な親中国派勢力がいるからだ。