自分が服用する薬を薬局任せにしてはいけない(写真/GettyImages)
薬も資本主義で動いている
原材料から管理体制まで、矛盾や問題をはらみながらも推進され続けるジェネリック薬品。真実を知った後、私たちはどう向き合うべきなのか。松山さんは、薬局で薬をもらう前、診察の段階で医師に質問することを推奨する。
「医師の診察を受ける段階で、ジェネリック薬をのんでも大丈夫なのかを確認し、心配なものは先発薬にしてほしい旨を医師に処方箋に書いてもらうといい。また薬局では受付で『ジェネリック薬を希望するか』を聞かれることもありますが、薬剤師からジェネリック薬の説明を聞いて決めるようにしてください」
薬剤師からジェネリック薬をすすめられても選択肢は患者にあることを忘れてはいけない。
「かかりつけの薬局をつくることも安全の担保になります。先発薬と違い、ジェネリック薬は1つの薬を複数のメーカーが作っているため何種類もあり、それぞれ少しずつ効き目が異なります。
ジェネリック薬品がすべて悪いわけではなく、なかには先発薬を上回る効果や工夫がみられるものもある。自分に合った薬を取り扱う薬局を選ぶのもひとつの手です。また、先発品メーカーが作るジェネリック薬である『AG(オーソライズド・ジェネリック)』は先発品と同等のものが多いと考えられています。服用する薬にAGがあるかどうかを調べて医療機関や薬局で希望することも推奨できます」(申さん)
一般にはあまり知られていないことだが、調剤薬局がジェネリック薬製造メーカーの関連会社にあたるケースがあることも知っておきたい。ある患者(48才)が言う。
「調剤薬局で、あまりに熱心にジェネリック薬に変えるようすすめるので、かえって不安になり、先発薬にしてほしいとお願いしたのですが、わざわざ医師に連絡され、『先生はジェネリック薬に変えていいとおっしゃってます』と言う。それでも先発薬をお願いしたら、『実は、うちにはこの先発薬は置いてない』と言われてしまった。後でこの薬局が某ジェネリック薬の製薬会社のグループ企業だと知り、あ然としました」
実際、日本ジェネリック株式会社の関連会社である日本調剤は、ジェネリック医薬品の使用率が同社平均88.8%とほぼ9割にもなり、国内の平均を大きく上回っている。こうした事実も頭に入れて薬を選んでほしい。また、松山さんは「薬を容易に変えてはいけない」と指摘する。
「ジェネリック薬でも先発品でも、最初にのみ始めた薬は医師がその人に合った投与量を決めていきます。ですからのみ続けて、効果を観察することが大切です。いちばん悪いのは、医師に相談せずにジェネリック薬からほかのジェネリック薬や先発品に勝手に変えること。体内への薬の成分の溶け出し方や吸収率が変わるので、気軽に変えると、思わぬ副作用が出ることもあるのです」(松山さん)
一連の事件がもたらしたのは「医療機関で提供される治療や薬は無条件に信頼できる」という、私たちの思考停止に対する警告だ。「製薬会社も利益を出すための“資本主義の理論で動いている”ことを覚えていてほしい。食品の添加物や原産地をチェックするような気持ちで、どの薬をなんのためにのむのか、そして本当に必要なのかを考えることが、自分の身を守り健康を保ついちばんの方法です」(鳥集さん)
良薬にするかリスクにするかは、選び方次第だ。
※女性セブン2021年4月22日号