成分が同じでも効きが違う

 ジェネリック薬の持つ不安要素は、今回の不祥事で明らかになった製造・管理体制のずさんさだけではない。関町内科クリニック院長で循環器専門医の申偉秀さんは、そもそもジェネリックと先発品が同一であるというとらえ方は危険だと警鐘を鳴らす。

「先発薬が出る前には有効性や安全性を確認するために、厳しい臨床試験と承認審査が行われます。しかしジェネリックは、先発薬で一度審査を通っているという前提のもとで製造されるため、検査項目が少なく、先発品ほど厳しい検査は行われません」

 そのため、品質的に劣る可能性があるというのだ。

「薬局では何種類も薬を服用する場合、のみ忘れを防ぐため1回分を1袋にまとめる『薬の一包化』を実施するケースがある。このとき薬を一度包装シートから出しますが、ジェネリック薬は保管時に変質しないか不安が残ります。というのも、先発品は温度や湿度を変えて成分に変化が起きないか厳しい検査をしていますが、ジェネリック薬ではそこまでの確認は実施されていないのです」(申さん)

 加えて、成分が同一であっても、添加物の内容や製造工程などが異なれば効き方にも影響が出てくる。

「薬剤の混ぜ方や、塗り薬ならば肌につけたときにどのくらい伸びるかなどは各メーカー独自の技術があるため、簡単には真似できません。例えば季節性のアレルギー薬の有効成分である『フェキソフェナジン』や痛み止めの『ロキソプロフェン』などは、患者さんから先発薬とジェネリック薬で効き方が違うという声があがることが多い。

 私も花粉症がひどいときは同じフェキソフェナジンを主成分とする薬でも、先発薬の『アレグラ』をのみ、そこまでひどくないときは価格が安いジェネリック薬を使用するなど使い分けることを意識しています」(申さん)

 元近畿大学薬学部教授の松山賢治さんも声をそろえる。

「代表的なのは、胃薬の『ランソプラゾール』。逆流性食道炎や胃潰瘍の治療でよく用いられますが、成分が非常に分解されやすい性質を持っています。そのためランソプラゾール配合の先発品『タケプロン』を開発した武田薬品は、分解を防ぐ技術を独自に開発している。つまり、たとえ成分が同じでも、独自の安定化剤の違いによって効き方にも違いが出ることがありうるのです」

関連キーワード

関連記事

トピックス

NHK中川安奈アナウンサー(本人のインスタグラムより)
《広島局に突如登場》“けしからんインスタ”の中川安奈アナ、写真投稿に異変 社員からは「どうしたの?」の声
NEWSポストセブン
カラオケ大会を開催した中条きよし・維新参院議員
中条きよし・維新参院議員 芸能活動引退のはずが「カラオケ大会」で“おひねり営業”の現場
NEWSポストセブン
コーチェラの出演を終え、「すごく刺激なりました。最高でした!」とコメントした平野
コーチェラ出演のNumber_i、現地音楽関係者は驚きの称賛で「世界進出は思ったより早く進む」の声 ロスの空港では大勢のファンに神対応も
女性セブン
文房具店「Paper Plant」内で取材を受けてくれたフリーディアさん
《タレント・元こずえ鈴が華麗なる転身》LA在住「ドジャー・スタジアム」近隣でショップ経営「大谷選手の入団後はお客さんがたくさん来るようになりました」
NEWSポストセブン
元通訳の水谷氏には追起訴の可能性も出てきた
【明らかになった水原一平容疑者の手口】大谷翔平の口座を第三者の目が及ばないように工作か 仲介した仕事でのピンハネ疑惑も
女性セブン
襲撃翌日には、大分で参院補選の応援演説に立った(時事通信フォト)
「犯人は黙秘」「動機は不明」の岸田首相襲撃テロから1年 各県警に「専門部署」新設、警備強化で「選挙演説のスキ」は埋められるのか
NEWSポストセブン
歌う中森明菜
《独占告白》中森明菜と“36年絶縁”の実兄が語る「家族断絶」とエール、「いまこそ伝えたいことが山ほどある」
女性セブン
大谷翔平と妻の真美子さん(時事通信フォト、ドジャースのインスタグラムより)
《真美子さんの献身》大谷翔平が進めていた「水原離れ」 描いていた“新生活”と変化したファッションセンス
NEWSポストセブン
羽生結弦の元妻・末延麻裕子がテレビ出演
《離婚後初めて》羽生結弦の元妻・末延麻裕子さんがTV生出演 饒舌なトークを披露も唯一口を閉ざした話題
女性セブン
古手川祐子
《独占》事実上の“引退状態”にある古手川祐子、娘が語る“意外な今”「気力も体力も衰えてしまったみたいで…」
女性セブン
ドジャース・大谷翔平選手、元通訳の水原一平容疑者
《真美子さんを守る》水原一平氏の“最後の悪あがき”を拒否した大谷翔平 直前に見せていた「ホテルでの覚悟溢れる行動」
NEWSポストセブン
5月31日付でJTマーヴェラスから退部となった吉原知子監督(時事通信フォト)
《女子バレー元日本代表主将が電撃退部の真相》「Vリーグ優勝5回」の功労者が「監督クビ」の背景と今後の去就
NEWSポストセブン