チーム松山。松山選手のウイニングパット後、早藤将太キャディ(左)がキャップを脱ぎ一礼したことも称賛を浴びた(時事通信フォト)

チーム松山。松山選手のウイニングパット後、早藤将太キャディ(左)がキャップを脱ぎ一礼したことも称賛を浴びた(時事通信フォト)

 笑顔は人をポジティブにさせると言われてきた。笑顔の効果だ。2019年8月、試合中も笑顔を絶やさず「スマイルシンデレラ」と呼ばれ、42年ぶりに日本人メジャー優勝を成し遂げた渋野日向子選手のことを思い出す。感情が伴わない作り笑いでも、ストレスを解消する効果があるという研究結果も出ているほどだ。笑顔を作ることで、マイナス感情が自分の中で増幅するのを抑え、感情に飲み込まれにくくなるのだろう。

 2打差で迎えた最終18番ホール、入ると思ったパットがカップ脇をすり抜けた。そのため、ウイニングパットを入れた時のガッツポーズはなし。ホールアウト後のインタビューで松山選手は、ガッツポーズについて「本当は18番でやりたかった」と答えた。ただ、優勝が決まった瞬間、一瞬にして緊張が解けたような穏やかな顔になり、取り出したボールをポケットに入れると、脱帽してゆっくりと踏み出し、勝利を噛みしめるように歩き出した。

 ガッツポーズを見せたのは、表彰式でグリーンジャケットを着た時だ。勝利の喜びがグリーンジャケットによって実感されたのだろう。両手を上げてガッツポーズ、それと同時に松山選手の笑顔が弾けた。人は、自らの行動や行動が起こった状況や環境によって、自分の感情を強く自覚すると言われている。心理学ではこれを「自己知覚理論」と呼ぶ。歓喜の感情がガッツポーズとともに心の底から湧き上がってきたようだった。

 ジャケットのボタンを閉め、松山選手は再び両手を大きく上げた。表情はやや硬い。だが次の瞬間、両手を何度も突き上げると、こぼれんばかりの笑顔を見せた。ガッツポーズによってさらに大きな喜びや嬉しさがこみ上げてくる、そんな印象だ。

 松山選手にグリーンジャケットはとてもよく似合う。おめでとうございます!

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