特筆すべきは別添の初回出荷特典CD。1席目の『付き馬』は年末特別興行での録音で、早桶屋の場面まで語ったところで馬生が舞台から去り、そこから芝居仕立てとなって、小さん(早桶屋の親父)と圓生(付き馬)のやり取りとなる趣向。名人同士の貴重な掛け合いだ。
もう1席は『二番煎じ』。ある“言い間違い”が疵となって本編には収録されなかった馬生十八番だが、この“言い間違い”がまた実に可笑しく、むしろ“奇跡の高座”として馬生ファンには珍重されるはずだ。どうせならこの特典CD付き商品を今すぐ購入することをお勧めする。
【プロフィール】
広瀬和生(ひろせ・かずお)/1960年生まれ。東京大学工学部卒。音楽誌『BURRN!』編集長。1970年代からの落語ファンで、ほぼ毎日ナマの高座に接してきた。『21世紀落語史』(光文社新書)『落語は生きている』(ちくま文庫)など著書多数。
※週刊ポスト2021年4月30日号