ライフ

東洋文庫ミュージアム【2】アヘン窟描いた銅版画に壇蜜「生々しい」

明清

近松門左衛門『国姓爺御前軍談』1716年。忠義の志が人々の心に響いて江戸時代に人気を博した人形浄瑠璃の『国姓爺合戦』を小説化したもの

 美術史家で明治学院大学教授の山下裕二氏と、タレントの壇蜜。日本美術応援団の2人が、日本の美術館や博物館の常設展を巡るこのシリーズ。今回は東京都・文京区の東洋文庫ミュージアムの第2回。2人が『大清帝国展 完全版』で公開されている貴重な資料を見て回る。

山下:東洋文庫は1924年に設立され、世界屈指の東洋学センターとしてアジア全域の歴史と文化に関する文献資料の収集や研究を行なってきました。

 ここ東洋文庫ミュージアムは東洋学の面白さを広く発信する場として2011年に開設され、豊富な蔵書から貴重な資料を公開。5月16日までの『大清帝国展 完全版』では、歴史資料で清の起源から終焉までを追います。

壇蜜:清の黎明期には日本と関連する書物もあります。

山下:近松門左衛門の『国姓爺御前軍談』ですね。元となった人形浄瑠璃『国姓爺合戦』は明朝滅亡後も台湾を拠点に清朝へ抵抗した明の遺臣・鄭成功を題材に描かれ、大変人気を博しました。鄭成功没後に清は鄭氏台湾を平定、後に大帝国へ発展を遂げるも、産業革命で強大な経済力と軍事力を得たイギリスとのアヘン戦争では大敗を喫します。

壇蜜:『アヘン戦争図』は教科書にも載っている有名な戦争画。一方で『アヘン吸煙者とばくち打ち』には清のアヘン窟の様子が生々しく描かれていますね。

山下:イギリスのパブを参考に多少脚色して描かれているため、酔って踊っているような怪しい動きの人物も紛れていますが、いかにアヘンが中国に蔓延していたのかが窺い知れます。

壇蜜:人々の年齢が不詳なのもイギリス人が中国人を描いているからなのでしょうね。ヨーロッパから見たアジア人の印象が絵から感じられて、興味深いです。

【プロフィール】
山下裕二(やました・ゆうじ)/1958年生まれ。明治学院大学教授。美術史家。『日本美術全集』(全20巻、小学館刊)監修を務める、日本美術応援団団長。

壇蜜(だん・みつ)/1980年生まれ。タレント。執筆、芝居、バラエティほか幅広く活躍。近著に『三十路女は分が悪い』(中央公論新社刊)。

●東洋文庫ミュージアム
【開館時間】10時~17時(最終入館は閉館30分前まで)※開館状況はHPにて要確認
【休館日】火曜(祝日の場合は開館し、翌平日が休館)、年末年始、臨時休館あり
【入館料】一般900円
【住所】東京都文京区本駒込2-28-21

撮影/太田真三 取材・文/渡部美也

※週刊ポスト2021年4月30日号

ハリー・ダレル『アヘン吸煙者とばくち打ち』1842年。アヘンの売買や喫煙場所となったアヘン窟を描いた銅版画

ハリー・ダレル『アヘン吸煙者とばくち打ち』1842年。アヘンの売買や喫煙場所となったアヘン窟を描いた銅版画

東洋文庫ミュージアムの荘厳な構え

東洋文庫ミュージアムの荘厳な構え

関連キーワード

関連記事

トピックス

近況について語った渡邊渚さん(撮影/西條彰仁)
【エッセイ連載再開】元フジテレビアナ・渡邊渚さんが綴る近況「目に見なえい恐怖と戦う日々」「夢と現実の区別がつかなくなる」
NEWSポストセブン
『続・続・最後から二番目の恋』が放送中
ドラマ『続・続・最後から二番目の恋』も大好評 いつまでのその言動に注目が集まる小泉今日子のカッコよさ
女性セブン
事務所独立と妊娠を発表した中川翔子。
【独占・中川翔子】妊娠・独立発表後初インタビュー 今の本音を直撃! そして“整形疑惑”も出た「最近やめた2つのこと」
NEWSポストセブン
名物企画ENT座談会を開催(左から中畑清氏、江本孟紀氏、達川光男氏/撮影=山崎力夫)
【江本孟紀氏×中畑清氏×達川光男氏】解説者3人が阿部巨人の課題を指摘「マー君は二軍で当然」「二軍の年俸が10億円」「マルティネスは明らかに練習不足」
週刊ポスト
田中圭
《田中圭が永野芽郁を招き入れた“別宅”》奥さんや子どもに迷惑かけられない…深酒後は元タレント妻に配慮して自宅回避の“家庭事情”
NEWSポストセブン
ニセコアンヌプリは世界的なスキー場のある山としても知られている(時事通信フォト)
《じわじわ広がる中国バブル崩壊》建設費用踏み倒し、訪日観光客大量キャンセルに「泣くしかない」人たち「日本の話なんかどうでもいいと言われて唖然とした」
NEWSポストセブン
ラッパーとして活動する時期も(YouTubeより。現在は削除済み)
《川崎ストーカー死体遺棄事件》警察の対応に高まる批判 Googleマップに「臨港クズ警察署」、署の前で抗議の声があがり、機動隊が待機する事態に
NEWSポストセブン
北海道札幌市にある建設会社「花井組」SNSでは社長が従業員に暴力を振るう動画が拡散されている(HPより、現在は削除済み)
《暴力動画拡散の花井組》 上半身裸で入れ墨を見せつけ、アウトロー漫画のLINEスタンプ…元従業員が明かした「ヤクザに強烈な憧れがある」 加害社長の素顔
NEWSポストセブン
趣里と父親である水谷豊
《趣里が結婚発表へ》父の水谷豊は“一切干渉しない”スタンス、愛情溢れる娘と設立した「新会社」の存在
NEWSポストセブン
米利休氏のTikTok「保証年収15万円」
東大卒でも〈年収15万円〉…廃業寸前ギリギリ米農家のリアルとは《寄せられた「月収ではなくて?」「もっとマシなウソをつけ」の声に反論》
NEWSポストセブン
SNS上で「ドバイ案件」が大騒動になっている(時事通信フォト)
《ドバイ“ヤギ案件”騒動の背景》美女や関係者が証言する「砂漠のテントで女性10人と性的パーティー」「5万米ドルで歯を抜かれたり、殴られたり」
NEWSポストセブン
“赤西軍団”と呼ばれる同年代グループ(2024年10月撮影)
《赤西仁と広瀬アリスの交際》2人を結びつけた“軍団”の結束「飲み友の山田孝之、松本潤が共通の知人」出会って3か月でペアリングの意気投合ぶり
NEWSポストセブン