2018年8月、カナダ・トロントで母親と鍼灸クリニックに向かう羽生
特に注目されたのが、羽生選手が国別対抗戦のフリーの最後に跳んだ3回転アクセルだ。
「高さ、スピード、ジャンプの入り方など、どれを見ても完璧でした。にもかかわらずGOEは3か4止まりで、満点の5をつけた人は1人もいなかった。これ以上の3回転アクセルはないといえるほどだっただけに、驚きましたね」(別のフィギュアスケート関係者)
羽生選手自身もこのジャンプについて、「わざとスピードは表現のため落として(難易度を上げて)いるなかで、力を感じることなくスムーズに軸に入って、高さもあるジャンプが跳べた。いまできるベストの3回転アクセル」だと語ったほどだ。
元国際審判員のAさんも、国別対抗戦を見て首を傾げたうちの1人だ。匿名を条件に取材に応じてくれた。
「ジャッジをしていた人間としてはとても言いにくいのですが、今回の国別対抗戦でも世界選手権でも、疑問に感じる採点は実際にありました。過去の大会では、自国の選手に高い点数をつけたり、ライバル国の選手に低い点数をつける“ナショナルバイアス”がかかることがよくあった。
9人のジャッジがつけた点数は、最高点と最低点がカットされた残りの7人の点数が平均化されるので問題はないという見方もありますが、複数の国に組織的にやられたらお手上げです。一方で、日本のジャッジはそういうことがないように注意するあまり、日本の選手に厳しい点数をつけてしまうこともあるのです」(Aさん)
実際に世界選手権でも、女子シングルの紀平梨花選手(18才)や坂本花織選手(21才)の採点についても「厳しすぎる」という声が多く上がっていた。羽生選手が「北京五輪のことは考えていない」と断言した裏には、こうした採点競技としてのフィギュアスケートに、“限界”を感じた面がある──そんな指摘もあるのだ。
※女性セブン2021年5月6・13日号