カジュアル業態拡大で増える「短期売り切り商品」
こうして見ると、順調そのもののワークマンですが、個人的には危うさをはらんでいると感じています。
ワークマンの新機軸は、一般カジュアル客向けの「ワークマンプラス」と新業態「ワークマン女子」の出店ですが、最近ワークマン側の今後の事業計画の説明が少し変調してきたように聞こえます。
昨年10月の初出店以降、店舗数を増やす新業態「ワークマン女子」(時事通信フォト)
元々、ワークマンもワークマンプラスもワークマン女子も店に並んでいる商品は同じで、品番の構成比を変えているだけということはよく知られています。となると、一般客向けのワークマンプラスとワークマン女子も、従来型ワークマン同様に商品のモデルチェンジは3~5年ということになります。
2018年秋のワークマンプラス出店時に、ワークマン側は「そのモデルチェンジのサイクルでも需要には対応できるだろう」とある程度の自信を見せていました。しかし、今年4月2日の「ワークマン女子」なんばシティ店(大阪)オープンに際して取材してみると、1年間で売り切ってしまう商品の店内構成比が13%まで拡大しているとのこと。
今後、ワークマンプラスやワークマン女子の店舗数をさらに拡大させる方向であることを考えると、他のアパレルのように売り切り商品が半数以上を占めるようなことにはならないでしょうが、一般客向けの店舗で3~5年間モデルチェンジしない商品が多いままでは、かなり売りづらいと思います。
「定番」に頼りすぎて苦戦したジーンズチェーン
アパレルの在庫過多問題がクローズアップされ、それへの対処法としてワークマンのモデルチェンジの長さが注目されたわけですが、今さら新しい手法というわけではなく、このやり方はカジュアル業界においては、かつて大手ジーンズメーカーがやっていました。
高度経済成長期から2005年頃まで隆盛を誇っていたエドウイン、リーバイス、ボブソン、ビッグジョンといった大手ジーンズメーカーです。これらは「定番」と呼ばれるジーンズを3~5年間くらいモデルチェンジせずに売り続けていました。
最もわかりやすい例としてリーバイスの「501」を考えてみてください。501は3~5年に一度モデルチェンジしてきました。しかし、これをメインの商材としてきたジーンズチェーン店は今どのようになっているでしょうか。大幅に業績を落としたり、経営破綻に追い込まれたりしています。もちろんジーンズメーカーの業績も苦しくなっています。
ということは、このモデルチェンジまでの長さではカジュアル業界においては、逆効果になりやすいということです。