インドでは火葬場が足りず、廃墟となった採掘場で犠牲者を火葬している(写真/AFLO)

インドでは火葬場が足りず、廃墟となった採掘場で犠牲者を火葬している(写真/AFLO)

市中感染している可能性がある

 そうなれば何としても水際でウイルスを食い止める必要があるが、国内では4月27日時点ですでに21例のインド型が確認されている。ほとんどが空港検疫で見つかり、うち1例は都内の80代女性から見つかった。女性にインド渡航歴はなく、感染経路は不明だ。

 5月3日にはインドから入国した50代の日本人男性が新型コロナの療養中に死亡した。男性は4月26日にインドから成田空港に到着後、検疫所の検査で感染が判明。厚労省は詳しいいきさつを調査するとともに、検体の遺伝子を解析するというが、まだウイルスがインド型かどうかはわかっていない(5月4日時点)。一石さんは日本の監視体制の緩さに警鐘を鳴らす。

「日本におけるウイルスのゲノム監視はわずか6.2%です。つまり、90%以上は遺伝子型を調べておらず、変異型の全貌をつかみ切れていません。しかも現状は英国型の実態把握が中心で、そのほかの変異型の情報収集は、検査数も解析スピードも不充分。そのため、すでにインド型の感染者が市中にいる可能性を否定できません。

 今年1月から2月にかけて、神戸で英国型への置き換わりが猛スピードで進んだことからもわかる通り、ウイルスの世界は弱肉強食で感染力の強い型にどんどん置き換わります。今後、国内でインド型の感染が一気に広がる可能性も否定できない」(一石さん)

 ただでさえ第4波に苦しんでいるのに、さらにインド型まで流行すると、日本は未曽有の危機に見舞われそうだ。

「すでに英国型によって大阪では医療が逼迫して入院先が決まらず施設で亡くなったり、救急隊が救命措置を行った例が相次ぎます。そうした状況で感染力が強いインド型が蔓延すると、第1波の際のイタリアのように、医療崩壊で大変な状況になる可能性があります。医療体制が脆弱で、ハイリスクの高齢者が多い日本は、油断ならない状況下にあると考えざるを得ません」(一石さん)

 第1波のイタリアは医療が崩壊し、70才以上の患者の集中治療室受け入れを断るなど、多くの病院で「命の選別」が進んだ。あの惨劇が、日本で繰り返されるかもしれない。

※女性セブン2021年5月20・27日号

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