「テスラを非公開化する」で会長をクビに
2018年8月7日には、テスラの株式についてツイッターで、
「(1株当たり)420ドル(約4万7000円)でテスラを非公開化することを検討している。資金は確保」
と投稿して、世間をパニックに陥れた。これを受けて米株式市場ではテスラ株が急騰。米証券取引委員会(SEC)は事態を重く見て、イーロンの一連の発言は、虚偽の情報で投資家を誤解させる行為、つまり証券詐欺罪だと彼を提訴した。
すったもんだの挙げ句、米証券取引委員会とイーロンは和解で決着した。しかし、そこには厳しい条件が付けられていた。
まず、イーロン個人に対し2000万ドル(約21億円)の罰金の支払い。さらに、テスラ会長職からの辞任だ。しかも将来3年に渡って、再び会長に就くこともできない。また、テスラ社にも2000万ドル(約21億円)の罰金が課された。
ところで、前述したエイプリルフールの「テスラ社が破綻した」から「テスラを非公開化する」までの間、さらに言うとその半年以上前から、テスラが約40万台の予約注文を受けた4ドアセダン「モデル3」の出荷が遅れ、イーロンは生産現場に自らが飛び込んで何とかしようと必死でもがいていた時期と重なる。
毎日、生産ラインの横で部下たちを叱り、それでも上手くくいかないとわかると、EV工場の横にフットボール場ほどの大きさのテントを立てて新たな生産ライン入れ、生産数量の挽回に努めて、夜も寝る暇がなかった。
しかも、テスラは以前から株の大量空売りに悩まされていた。空売りにはツイートでイーロンはこれまで応戦していたが、そこにモデル3の生産地獄が重なって、頭にきて発信したのが2つのツイートだというのが筆者の見立てだ。
テスラが破綻すれば、空売り筋は大損だし、株の非公開化でも同様だ。日本なら居酒屋で愚痴るようなことも、イーロンはSNSで発信してしまう。そこに人間味を感じ、ますます大好きになるファンもいれば、「けしからん」と怒る人もいるだろう。
別の日には、ロシアのプーチン大統領に対し、「クラブハウスで私と話をしませんか?」とイーロンはツイートしたこともあった。クラブハウスとは、招待制の音声交流サイトだ。ちなみにプーチン大統領からもクレムリンからも返事は来なかった。