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がんステージIVのママ【後編】1才の娘を残して「死ぬなんてできない」

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2020年の大晦日に家族3人で記念写真を撮影(写真/本人提供)

 21才でステージIVのがん宣告、23才で出産。娘の1才の誕生日前に医師から「看取りの準備」を告げられた──遠藤和(のどか)さん(24才)は、ステージIVの大腸がんを患い闘病中。現在は都内の病院で入院生活を送っている。

 2018年10月、正式に「ステージIIの大腸がん」という診断を受けた和さんは、「一刻も早く抗がん剤を」という医師の勧めを受けるが、「子供を産むチャンスがあるのにやらないなんて」と、卵子凍結を行い、妊娠のチャンスを探る。しかし、がんは予想以上に進行しており、同11月にはステージIVの診断を受けた。

私は死んでもいいから赤ちゃんを助けてあげたい

 ステージIV──末期がんの診断を受けても、和さんは前を向いていた。2016年に知り合った夫の遠藤将一さん(30才)とは2019年12月に結婚。「すぐにでも妊娠したかった」という和さんは、同年10月から抗がん剤を中止。体外受精のタイミングを見計らっていた2020年1月、自然妊娠が発覚した。

「妊娠がわかったときは、100%うれしかったです!」(和さん・以下同)

 妊娠中は原則的に抗がん剤治療を中止することになり、がんの増悪が懸念される。喜びもつかの間、病魔は待ってくれなかった。

〈2020年4月21日(火)

 再発の疑い。ショックすぎ。やっぱり癌なんだ。覚悟はしてたつもりだけど、せめて産んでからがよかった。これからどうしよう。

 2020年5月7日(木)

 両卵巣転移だった。片方(の腫瘍)は10cmごえの大物。腹水も少し増えてた。不安ね。明日から入院して抗がん剤再開するって。一応、もう18週だから子供に影響することはなさそう。でもこのままだとやっぱり28週くらい。うまくいっても30週くらいには産むことになりそう。辛い。ベビのためになることをしたい。あと、子供だけじゃなくて私も無事でいたい。〉

 和さんはそれまで健診を受けていた産婦人科クリニックから、地元のがん拠点病院へと転院することになった。この頃、和さんは毎日泣いていたという。

「がんの私が子供を望んだらいけなかったのかも、と何度も思い悩みました。唯一の安らぎは、赤ちゃん用品を選ぶとき。そのときでさえ“今後は買い物にも行けなくなるかも”“子供がこのサイズの服を着る頃、私は生きてるのかな”などと、悪いことばかり頭をよぎりました」

 何よりの気がかりは、赤ちゃんが無事に生まれるだろうか、ということだった。

「本来なら妊娠40週までお腹で育てたかった。でも主治医から『28週までに治療を始めないとあなたの命がもたない』と言われました。赤ちゃんにとっては早産がリスクで、自発呼吸ができない子が生まれる可能性があるとの説明も受けました。正直、私は死んでもいいから赤ちゃんを助けてあげたい、守りたいと思いました」

 結局、29週での出産予定となったが、念のため27週で入院すると、当日の夜から高熱と陣痛が和さんを襲った。

「私は死んでもいいから、あと1週はお腹で育てさせて、と言い張ったのですが『あなたの命が危ないので帝王切開します』と言われた。手術室に入る前に夫の顔を見て“これで最後になるかもしれない”と思い、涙が出ました」

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