マラソン、筋トレより散歩
食事以外の生活習慣も、免疫に影響を及ぼす。メディアで取り上げられる機会が多い運動は血液やリンパの流れが良くなることで免疫細胞が体内を移動しやすくなり、体温の上昇も伴なって活性化する。だが、これも適度のバランスが重要だ。
「フルマラソンのような過剰な運動をするとステロイドホルモンが分泌され、免疫細胞の働きを落とすといわれています。筋トレをしすぎて風邪を引きやすくなったという話もよく聞きます。筋繊維の修復に白血球が使われてしまい、ウイルスの侵入を防ぐ粘膜の血流が減ってしまうためです。免疫を保つという目的なら、毎朝15~30分ほどの散歩で十分でしょう」(前出・奥村氏)
体温の上昇で免疫細胞が活性化するため、入浴も効果的だという。
「ただ、42度以上の熱すぎるお湯に首まで浸かっていると、心臓や血管に負担がかかり、高齢者の場合、危険です。40度程度の風呂に10~15分程度が効果的です」(前出・奥村氏)
睡眠も免疫と大きな関わりがあるが、適切な睡眠時間はあるのか。米カリフォルニア大サンフランシスコ校の研究によると、睡眠時間が6時間未満の人は、7時間以上の人に比べて、風邪を引く確率が4.2倍という結果が出ている。睡眠時間が短いと自律神経が乱れ、免疫機能に悪影響が出るためとされる。ただし、睡眠時間が長すぎても逆効果になる。
「食事は、就寝3時間前までに済ませたほうがいい。眠る直前に食事をすると最低3時間ほど交感神経が優位になり、眠りが浅くなる。腸は副交感神経が働く睡眠中に、腸のクリーンアップをしますが、胃に消化物が残っているとその働きが阻害され、免疫と深くかかわる腸内環境が悪化します。また、長時間の入浴で交感神経が強まってしまうと、質のいい睡眠がとれなくなる。パソコンやスマホも交感神経を高めるので就寝前はNGです」(前出・奥村氏)
生活習慣は一つ一つが複雑に絡み合って、免疫に影響する。孔子は『論語』にて「中庸の徳たるや、それ至れるかな」と、どちらにも偏らない中庸こそ最高の人徳だと説いた。「体も中庸」を心がけたい。
※週刊ポスト2021年6月18・25日号