陣営は素質馬に名手を乗せたがり、すると人気も上がる。だが彼はデビュー戦では馬の将来を勘案して厳しいムチを控えることもあるという。そのイズムの影響かもしれぬ。「ルメールの新馬戦、人気は割引」。これはアリだ。

 さて、ポジティブネタのほうも。「GIデーは他の乗鞍も注意」。当日はいつも以上に気合いがみなぎって勝ち切るというわけだった。

 2020年から今年のダービーまで241鞍で64勝。勝率.266。2020年全体の勝率は.261。まあ、少し上回っている。

 その30日間のうち未勝利は3日のみ。6勝(!)と5勝は1回ずつ、4勝2回、3勝4回。固め打ちの印象だが、他の日にも5勝、4勝も数多く、ルメールに限っては珍しいことでもないのだった。

 データを取れば取るほど凄みを突きつけられる。外しどころがどんどん狭くなってくるような。でも面白い。さらに粘ってみた。

【プロフィール】
須藤靖貴(すどう・やすたか)/1999年、小説新潮長編新人賞を受賞して作家デビュー。調教助手を主人公にした『リボンステークス』の他、アメリカンフットボール、相撲、マラソンなど主にスポーツ小説を中心に発表してきた。「JRA重賞年鑑」にも毎年執筆。

※週刊ポスト2021年6月18・25日号

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