その時は意味がわかりませんでしたが、後になってこの言葉が本当に身に沁みました。デビュー曲がヒットした後も下積み時代が長く続き、何回もしゃがみましたから。
倒れてしまうと起き上がるのに時間がかかるから「しゃがむ」。倒れる前にしゃがんで、立ち上がるまで力を溜める。
『おもいで酒』(1979年)がダブルミリオンのヒットになったのは、先生が亡くなられた翌年のことです。レコード大賞の最優秀歌唱賞と紅白歌合戦の初出場は、墓前に報告に行きました。それから毎年欠かさずお墓参りをして、先生とたくさんお話ししています。
先生は生前、「平和になったら自分の歌が歌われない時代がくる。そんな世の中になってほしい」とおっしゃっていました。でも、古賀メロディは不滅です。ずっと歌い継いでいくのが、私たち弟子の役目だと思っています。
※週刊ポスト2021年6月18・25日号