昨年コロナ前の1月に突然亡くなってびっくりした文芸評論家であり博覧強記の東京っ子。『ツボちゃんの話 夫・坪内祐三』(佐久間文子/新潮社)が胸を打つ。昭和33年生まれと私より10歳も若いのだ。ひたすら「本」と「東京」を愛していた。
ついこの前の東京のシーンを想い出したかったらいい写真集が出た。これ1冊ながめながら3日は飲める。『東京タイムスリップ1984⇔2021』(写真・善本喜一郎/河出書房新社)。新宿を、渋谷を、1980年代に撮り、今コロナ禍で同じポジションから町を撮る。無くなった風景、消えたビルや商売を想い出させる。
そうだ、亡くなった『ショーケン 天才と狂気』(大下英治/青志社)も心ゆさぶられる。
イラスト/佐野文二郎
※週刊ポスト2021年7月2日号