徹底した「平等」への圧力

 もっとも、このような同調圧力社会は統治する側にとって都合がよい。政治家は自分の手を汚さずに目的を達成できるので、同調圧力を積極的に利用しようとする。知事がメディアを通して「連休中の帰省は控えてほしい」「食事はお家で、外出は控えましょうね」と発言するだけで世間が勝手に圧力をかけてくれる。

 だからといって、リーダー自身も共同体の同調圧力を受けずにいられるわけではない。長引くコロナ禍の閉塞感で人々の意識は一層共同体の内側を向くようになり、メンバー間の不平等にますます敏感になってきた。

 ワクチン接種をめぐっては、優先接種の対象になっていない市長や町長が接種したとしてバッシングされ、オリンピック・バラリンピックの出場選手にいたっては一般国民と別枠で提供されたワクチンの接種であるにもかかわらず、「特別扱いは許されない」「一体感を損なう」という反対の声が上がった。

 もはや国や地域の舵取りを担う要人だろうが、国を代表する選手だろうが例外にはできないのである。

緊急事態宣言が解除され人出が増える渋谷(AFP=時事通信フォト)

緊急事態宣言が解除され人出が増える渋谷(AFP=時事通信フォト)

コロナ後は欧米との格差がさらに拡大する

 大きな問題は、このような過剰とも言える共同体意識と、そこからくる同調圧力が、コロナ後に予想される急速な社会的変化に逆行していることだ。

 コロナ禍が終息すれば、世界の変化は一気に加速するだろう。産業界ではDX(デジタルトランスフォーメーション)や、脱酸素社会への移行に向けたグローバルな技術開発競争がさらに激しくなると予想される。

 そこではイノベーションや積極的な起業が勝敗を左右する。そのイノベーションや起業にとって、同調圧力は最大の敵だといっても過言ではない。革新的な技術やブレークスルーは異端や異質な存在、つまり周囲と違うところから生まれる。そして新たな事業や画期的なビジネスの成長には「突出」することが不可欠だからである。

 いわゆるIT革命が世界に広がった1990年代半ばを境に、わが国の労働生産性や競争力は国際的な地位が急激に低下し、欧米に大きく水をあけられた。このままだとAIやIoTによる第4次産業革命が本格化するこれから、欧米との格差はいっそう拡大するに違いない。

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