選手村で配られる予定という男性器に装着すると浮世絵が浮かび上がるコンドーム(テレビ東京「ワールドビジネスサテライト」より)
わかりやすいのは政府・自民党の応援団よろしく振る舞う産経、読売の両社だ。産経と系列のFNN(フジテレビなど)が6月19・20日に実施したという世論調査では、五輪開催について、「観客を制限して開催33.1%、観客を入れないで開催35.3%、中止する30.5%」(わからない・無回答などは割愛。以下同)という結果で、産経は「五輪中止 3割に急減」と見出しを打った。これは読売にも共通する「応援団」の特徴だが、調査の選択肢に「延期する」と「計画通りに実施する」を入れないことで、読者に「賛成の人が多いんだ」と印象づけようとしている。読売が6月4~6日に実施した調査の結果は、「観客数を制限して開催する24%、観客を入れずに開催する26%、中止する48%」である。これをもって読売が付けたびっくりする見出しが「東京五輪『開催』50%、『中止』48%」。賛成の国民のほうが多いと言いたいのだろうが、政府や組織委が進めているのは「観客1万人開催」である。選択肢を絞った読売調査を根拠としても、政府案には74%が反対していることになる。どこが「国民も認めている」というのか。
五輪中止社説を書いた朝日の6月19・20日実施の調査では、「今夏開催34%、再び延期30%、中止32%」であり、毎日の6月19日調査では、「(五輪開催は)妥当だ22%、無観客で開催すべきだ31%、再び延期すべきだ12%、中止すべきだ30%」となっている。両社は紙面では五輪開催を批判する論調を取っているが、この世論調査結果を報じた見出しはそれぞれ「五輪『無観客で』53%」(朝日)、「五輪『無観客開催を』31%」(毎日)と、判で押したように「無観客」が国民の声であるように誘導している。朝日が見出しにした53%というのは、開催を前提として観客数をどうするか訊いた質問に対して「制限する42%、観客なし53%」という結果が出たことによるが、本来なら最初の質問を元に「五輪『中止・延期』62%」とするのが普通だろう。
川淵氏の暴言にも居合わせた記者から疑問の声は上がらず(時事)
ちょっと意外なのが、どちらかいうと「応援団」に近いと見られてきた日経で、5月31日に報じた調査結果では、他社に比べて選択肢もしっかり揃えており、「通常通りの観客数で今夏に実施1%、観客数を制限して今夏に実施17%、無観客で今夏に実施16%、再延期もやむを得ない22%、中止もやむを得ない40%」となっている。今夏の五輪開催に賛成の国民が3分の1、反対が3分の2、有観客に賛成なのは5分の1以下という結果で、巷やネットの声と比べても、これが本当の国民世論に近いのではないか。
なお、NHKは予想通り「応援団」の側で、6月11~13日実施の調査には「延期」の選択肢はなく、「これまでと同様に行う3%、観客の数を制限して行う32%、無観客で行う29%、中止する31%」である。質問そのものが「観客をどうすべきか」という開催を前提にしたもので、そこに目をつぶったとしても、やはり政府案への賛成は国民の3分の1しかない。
厚労省に助言する専門家組織である「アドバイザリーボード」は6月16日の会合で、五輪を有観客で開催した場合には感染者が最大1万人以上増えるという予測をまとめた。日本のコロナ致死率は約1.8%だから、1万人感染者を増やすということは、国民180人が命を落とすことを意味する。それもインド変異株が流行する前の致死率を元にした試算だ。菅義偉・首相や組織委の橋本聖子・会長、選手村の川淵氏、そして大手メディア各社は、世論を操作・誘導することで180人の国民を殺そうとしているに等しい。こんな凶悪な“平和の祭典”などあるだろうか。6月28日発売の『週刊ポスト』では、この殺人五輪の裏にあるカネ、カネ、カネの企みを徹底追及する。