酒類の販売容認から一転、禁止を発表した橋本聖子組織委会長(写真/時事通信フォト)
前回は、新型コロナウイルス感染症対策分科会の尾身茂会長の東京五輪開催に疑問を呈した発言に、「全く別の地平から見てきた言葉」という独特の表現で問題をごまかし、都合が悪くなると手の平を返すような政権だと暗に世間に知らしめてくれた。今回は、会場での酒類販売に「ステークホルダーの存在がどうしてもある」とスポンサーを意識した発言で、長い物には巻かれろ的な、忖度が見え隠れする政権の有り様を、きっちり見せてくれたのだ。
当然ながら、これらの発言で彼女の株は上がらなかった。人に分からせよう、理解させようとして発言したつもりが、かえって反発を招いて批判が集中、逆効果となって自分に返ってくる「ブーメラン効果」を生み出してしまっただけだ。
丸川五輪相の発言に火消しに走った組織委だったが、23日には橋本聖子会長が「国民に少しでも不安があるならば」と酒類の提供を断念することを発表。武藤敏郎事務総長も、方針を一転させたのはなぜかとの質問に対し「観客数の上限が決まって本格的に決断が必要となった」と発言。だが、スポンサーのアサヒビールは酒類提供を容認する報道を受け、提供を見送るよう22日に組織委に提言していたというのだから、そもそも提供を検討すること自体おかしな話だ。政権も組織委も一体どこを向いているのかと思ってしまう。
とはいえ、恐るべきは「国民に少しでも不安があるならば」という議論の的が、五輪開催から会場での酒類販売にいつの間にかすり替わっていることだ。前回の丸川発言の後も、メディアは五輪開催の是非よりも尾身会長と政権の対立かと騒ぎ立て、世間の目がそちらへ向くための一助となった。要所要所で非難の種を撒くことで、延期や中止を求める世論の矛先を変えていくようサポートする丸川氏。さすが五輪担当大臣だけのことはある。