タクシーアプリの急速な普及にもベテランドライバーは苦労している(イメージ)

タクシーアプリの急速な普及にもベテランドライバーは苦労している(イメージ)

 入社祝い金については、実はコロナ禍前に他社から転職してきたというベテランドライバーも受け取っていた。だが、半年から1年の勤務を継続した場合のみに支給されるという条件付きで、現在入社している若いドライバーについては、在籍期間の制限はなく、採用1ヶ月後には支給されている。

 こうした格差だけでなく、週末などの稼ぎ時のシフトが若手に優先されるなどして暇になったベテラン勢は、新入りにイヤミをぶつけてなんとか溜飲を下げているというが、会社はもはや露骨に若手びいきをしている。ベテランに比べて基本給が抑えられるなどの「若手を使う」メリットが会社にもあるだろうが、果たして森下さんのいうような単なる「中高年排除」なのか。都内の大手タクシー会社幹部が声を潜める。

「渋谷で起きたタクシー事故以降、ドライバーの健康管理がかなり厳しくなりました。中高年ドライバーになれば、基礎疾患を持っている人も少なくないし、健康診断に引っかかって乗務停止になる人も」(タクシー会社幹部)

 今年1月、東京・渋谷で横断歩道にいた歩行者がタクシーにはねられ、6人が死傷、事故を起こした70代のタクシードライバーは事故直後に意識を失い、そのまま死亡した。ドライバーが乗務中にくも膜下出血を起こしたことが事故の原因とされており、この事故をきっかけに、タクシー各社は乗務員の健康管理について見直しを迫られたという。すると、中には健康診断の結果が芳しくなく、仕事を追われるドライバーも出現した。会社側としてははっきり「中高年リスク」を再認識したのだと話す。

「ベテランドライバーを蔑ろにするつもりは全くないが、これまでのような給与は支払えず、より安価に働いてくれる若手採用に積極的になっている、というのは事実かもしれません。結果としてベテランさんが居づらくなり辞めてしまう。あとは、業界の高齢化も問題視されていたことで、事故はその契機にもなった。若返りをはかりたいという各社の思惑も当然あるでしょう」(タクシー会社幹部)

 コロナを機に若返りを図り業務体質の改善もはかりたいというタクシー会社と、仕事を失いかねないという不安に苛まれるベテランドライバーたち。先出のドライバー・森下さんは、すでに運送業界への転職を模索中。コロナ禍で伸びる通販業界の好調の恩恵に預かれると笑うが、将来性は期待していないと、こう漏らす。

「もう単発の仕事で、その日暮らしでやっていくしかない。ドライバーしかできない中高年でも必要とされる現場があるなら、どこだって喜んで行きますよ。新たな仕事も覚えられないし勉強もできないし体力もない。若手にも、若手を優遇する会社にも最初は憤りを覚えましたが、私たちが居座っていても後が続かないのでしょうから」(森下さん)

 コロナ禍を機に新陳代謝を図ろうとするタクシー業界の選択は、将来「よかった事」とされるのか、それとも「中高年の追い出し」だったと評されるのか。

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