ドラマの撮影が重なる波瑠

月9が話題の波瑠

コロナと戦う医療従事者とシンクロ

 救命救急がテーマの作品は、危険な状態の患者が次々に運ばれる緊迫感があるほか、複数の患者にかかわるエピソードを描けるテンポのよさも魅力の1つ。視聴者にアクティブでスピーディーな印象を与えられ、夏のムードにもフィットしやすいところがあります。

 さらに、夏期と救命救急の好相性を裏付けているのは、「夏祭りや花火大会などの開放的な現場で大惨事が起き、生命の危機にさらされる」という落差の大きいストーリーが生み出しやすいこと。たとえば、「浴衣姿で夏祭りを楽しんでいたカップルが事故に巻き込まれ、緊急搬送される」というシーンは、落差の大きさで視聴者を一気に引き込むことができます。

 4日スタートの『TOKYO MER』も救命医たちのチーム戦を描いた作品ですが、もう1つの重要な意味合いは、コロナ禍で奮闘を続ける医療従事者へのエール。自らの危険を顧みず災害現場に飛び込んでいく医師たちの姿は、コロナと戦い続ける医師たちとシンクロする部分があるだけに、主人公たちの活躍が救いのような存在になりそうです。

 ここまで夏期に救命救急ドラマが放送される理由を挙げてきましたが、「また医療ドラマか」「どこかで見たイメージ」などと企画そのものへの不満を挙げる声があるのも事実。そんな声を覆すために、どうオリジナリティを見せていくのか。コロナ禍の深刻さに加えて、東京オリンピックも開催される今夏の救命救急ドラマは、これまで以上に制作サイドの腕が試されそうです。

【木村隆志】
コラムニスト、芸能・テレビ・ドラマ解説者。雑誌やウェブに月30本前後のコラムを提供するほか、『週刊フジテレビ批評』などの批評番組に出演し、番組への情報提供も行っている。タレント専門インタビュアーや人間関係コンサルタントとしても活動。著書に『トップ・インタビュアーの「聴き技」84』『話しかけなくていい!会話術』『独身40男の歩き方』など。

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