西村康稔・経済再生相からも発言に迷いが見られる(時事通信フォト)

東大法学部卒の西村担当相(写真/時事通信社)

 だが、発言撤回したのはいいが、11日に更新したTwitterでは、「趣旨を十分に伝えられず反省しております」と投稿。この文章だと、上手く伝えられなかったこと、誤解を招くような表現をしたことが問題だと思っているということになる。つまり、圧力発言自体、何がどう問題だったのか分かっていないのか、分かっていたとしても間違いだと認めたくないのか、このどちらかだろう。

 政府はこれまで、国民への感染対策を“お願いベース”で進めてきた。他方で、人流を止めるため、感染を抑えるため「我慢しろ」と言い続け、要請という名の制約がどんどん幅を利かせている状況だ。私権制限などへの懸念や補償問題が生じるためなどと報じられてきたが、コロナ渦になってから既に1年半。憲法学者たちが指摘してきたにもかかわらず、政府の憲法に対する意識は変わることなく、お願いベースの要請が継続されている。依然として「曖昧性選好」のままなのだ。

 人は通常、曖昧なことを嫌うと言われる。だが、上手くいかない確率が高い時、損失が繰り返し見込まれる時は曖昧を好むという。「物事をはっきりさせて責任を取りたくない」、「損失を被りたくない」という気持ちが強くなるのだろう。特に、自分が有能だと感じている場合はなおさらだという。

 今回の西村担当相の発言は、一瞬明確な強硬策を打ち出したかと思われたが、「ソフトな恫喝」と非難を浴び、法的な問題もクリアにされず曖昧なまま、金融機関に働きかけを依頼するという形で責任も判断基準も金融機関任せ。言ってしまえば、対策を打ち出した方の立場は曖昧だ。強気で発言した西村担当相だったが、曖昧性選好の要請だったということだろう。

 菅義偉首相も、強気の要請の直後に撤回という迷走ぶりに陳謝したものの、「要請の具体的な内容について議論したことはありません」と発言。西村担当相の独断専行というイメージが強くなっているが、要請を容認したという菅首相の責任も、どうやら曖昧なまま終わりそうだ。

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