キズナ産駒のセルキスの2021(写真:Japan Racing Horse Association)

キズナ産駒のセルキスの2021(写真:Japan Racing Horse Association)

 ダービー馬キズナはディープボンドやマルターズディオサ、ビアンフェやバスラットレオンといった重賞勝ち馬が出たことで種付け料も1000万円と跳ね上がったが、まだGⅠを勝った産駒がいない。ヴェロックスの半弟セルキスの2021が当歳最高価格の4億1000万円という値を付けたがスタートは4000万円で、セリの熱気に煽られた価格だったともいえる。

 自身は準オープン止まりながら、2歳馬が4頭も勝ち上がっている新種牡馬シルバーステート産駒ではギエムの2020が2億6000万円までセリ上がった。1歳市場におけるディープ産駒種牡馬としての最高額で、サクソンウォリアー産駒を7000万円も上回った。種付け料も150万円(2021年公示)とリーズナブルだが、なぜか当歳市場には上場がなかった。

 あとは当歳で3頭が落札(最高6200万円)されたアルアインが、種牡馬としても意外性を見せるかどうか。

 いずれにしろ「我こそはディープ後継者!」と力強く名乗りを挙げる息子はまだいない。

 一方のキングカメハメハは早々とルーラーシップいう良血種牡馬を送り出し、ロードカナロアはGⅠ馬を4頭も輩出。まずまずのスタートを切ったドゥラメンテに加えてレイデオロという若手のホープまで登場。この4頭の産駒だけで億越えが15頭も出ている。その他リオンディーズやトゥザワールド、ホッコータルマエやラブリーデイなど様々なタイプの種牡馬がいる。

 トップオーナーの今年の購買傾向を見ても、すでに実績のあるハーツクライのほか、ロードカナロア、ルーラーシップ、ハービンジャー、さらにエピファネイアと、引退後種牡馬になることを念頭に置き、“非SS系”“非ディープ系”をより重視している印象がある。

 もちろん今年が産駒デビューのサトノアラジンや、数少ない産駒から勝ち上がり馬が出たトーセンレーヴ、さらに来年以降サトノダイヤモンドやサトノアーサーの子らが、クラシック戦線を賑わせるかもしれないし、キズナやミッキーアイルの産駒がGⅠの常連になるかもしれない。種牡馬の導入ほど目立たないが、世界各国トップクラスの繁殖牝馬が毎年のように日本にやってくる。そのほとんどがSS系との配合が可能なため、現役時代の成績とは関係なく種牡馬として成功するケースも出てくるだろう。

 しかし、現時点では後継種牡馬としてはどれも決め手に欠ける。それが今年のセレクトセールを終えた実感だ。そんなことで生産界の一部からは早くも「コントレイル待ち」といった声も上がっている。

●ひがしだ・かずみ/伝説の競馬雑誌「プーサン」などで数々のレポートを発表していた競馬歴40年、一口馬主歴30年、地方馬主歴20年のライター。 

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