近未来的なイメージが漂う夢洲駅の駅構内イメージ図

近未来的なイメージが漂う夢洲駅の駅構内イメージ図

膠着状態に陥った夢洲駅開発

 前述したように、夢洲駅は大阪市が所有する土地に建てられるが、駅の補完施設は公益社団法人2025年日本国際博覧会協会(万博協会)が整備することが決まっている。

 しかし、万博協会はインフラ整備のノウハウを有していない。そこで万博協会は、大阪市に整備事業の事務を依頼。万博協会からの依頼を受け、大阪市は7月7日に補完施設の工事を請け負う事業者をプロポーザル方式で募集する。

「夢洲駅は地下10メートル付近に改札口が設けられる構造になりますが、改札を出た一画に駅補完施設という空間を設けます。この空間を使用する事業者を【1】万博までに整備を完了する【2】万博会期中は市が使用する【3】賃料の設定を条件にして募集しました。募集前には見学会も実施して、数社が参加しています。ところが蓋を開けてみたら、応札者はゼロ。不調に終わりました」(大阪市経済戦略局国際博覧会推進室の担当者)

 応札者がゼロだった理由は現段階では不明だが、大阪市は駅補完施設の整備などを請け負う事業者が現れなかったことから一連の事務を万博協会へ戻そうとした。

 大阪市が事務を返還すれば、万博協会は再び一から事務を担当する事業者を探さなければならない。ここで事業を仕切り直すことになれば、工期が遅れることは必至だ。

こうした背景もあり、万博協会としては大阪市になんとしても事務を引き受けてもらわなければならない。しかし、工事を担当する事業者が現れないことにはどうしようもない。夢洲駅の工事は膠着状態に陥っている。

 仮に駅補完施設が完成しなくても、線路やホームといった鉄道の機能だけでも整備が完了すれば万博会場までの足は確保できる。しかし、そうした方針で夢洲駅を整備すれば仮設のような不恰好な駅になってしまう。吉村市長(当時)が誇らしげなツイートは何だったのか? あのツイートを見て大きな期待を抱いた市民は、今度は落胆することになる。

 さらに言えば、今年5月に大阪メトロ中央線を延伸させる事業費が約40億円も上振れすることが判明している。それまで延伸にかかる事業費は約250億円と試算されていた。それが約290億円に膨らむわけだから、見通しが甘いとの非難は免れない。

 中央線を夢洲駅まで延伸させる事業は、大阪メトロではなく大阪市が事業主体となって整備を進めてきた。増える事業費は、市民が収めた税金で補填されることになる。バラ色のように語られた夢洲駅の計画は、一転して悪夢のような現実に直面しているのだ。

 なぜ、こんなことになってしまったのか? 東京2020五輪も大阪2025万博も、共通するのは政治家たちの勇み足だ。

 昨今は行政改革によって現場の職員はどんどん削減された。また、正規職員を非正規職員へと切り替えたこともノウハウ不足・スキル不足を生み、現場が回らない要因になった。そんな状況では通常業務でさえ厳しいが、政治家たちは現場のことはお構いなし。事前の熟議や調整もなく、大型プロジェクトを次々に打ち出す。

 交通インフラの整備が遅れている状況は危ういと言わざるを得ない。特に、鉄道アクセスの整備は万博の命運を左右する。1970年の大阪万博では、国鉄が総力をあげて万全の輸送体制を構築。臨時列車を多数増発して、来場者の足を確保している。

 大阪万博の開幕まで、あと4年。安穏とできるほどの猶予は残っていない。

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