いきなり服用をゼロにはできないため、「いつ降圧剤を飲めばいいでしょうか」という質問も多い。
「家庭血圧計測結果を確認して、朝の血圧の下がりが強いときには夜の降圧剤を減量し、夜の降圧が強いときには朝の降圧剤を減量するという方針で対処します。降圧剤ごとに効き方のピークがあり、そのピークの時間帯をうまく利用して処方しているので時間と容量を自己判断で変えてはいけません」
血圧は生活習慣のバロメーターで、容易に変動する。「薬を減らしたら、血圧が上がってしまった。どうしたらいいか」という悩みも寄せられる。
「変動があった場合は問診で原因を探ります。必ずしも薬を減らしたことが原因とは言えません。旅行や家庭内のストレスなどで一時的に上がることはありますが、これが続くようなら1日の塩分摂取量の目安とされている6gを超えた食生活を続けていたり、睡眠不足で生活習慣が乱れていないか確認します」
知らないうちに塩分を過剰摂取しているケースが多いという。
「醤油やソース、卓上塩をかけなければ制限できると思っている人は多いですが、食材にも塩分が含まれています。甘い菓子パンでもあんパンには1個あたり約0.7g、クリームパンには約0.9gの塩分が含まれています。
『自分の食事のどこに問題があるかわからない』という人も多いので、管理栄養士の指導が必要です。1週間の食事を写真に撮っておき、評価してもらって見直していくといいでしょう。
『お酒は飲んでもいいか』ともよく訊かれますが、アルコールそのもので血圧が上がることはありません。ただ、量が増えると塩分の多いつまみを食べ過ぎてしまい血圧が上がってしまう。厚労省が定める1日のアルコール適正量(ビール中瓶1本、日本酒1合)の範囲で楽しんでください」
最終的には「血圧がどれくらいまで下がれば、完全に降圧剤をやめられるか」という疑問にたどりつく。
「血圧ガイドラインでは120未満が理想とされていますが、中高年だと、めまいやふらつきを訴える患者が多い。当院では家庭血圧の降圧目標が135/85未満の人であれば無投薬で130未満を継続できれば服薬中止を指示しています」
【プロフィール】
坂東正章(ばんどう・まさあき)/1953年生まれ。徳島大学医学部医学科卒業。元心臓血管外科専門医(循環器科・心臓血管外科)。2003年、徳島県で『坂東ハートクリニック』を開院。著書に『血圧は下げられる、降圧剤は止められる』など。
※週刊ポスト2021年7月30日・8月6日号