「エクセル父さん」に足りないもの
合同相談会で受験相談を受けることもあるのだが、エクセルで学校比較表を作成して持参してくる父親もいる。
縦軸に学校名、横軸に各模試の偏差値、大学グループ(国公立、早慶、MARCH)ごとの合格者数、英数の授業時間数、長期休暇中の講習日数などの欄を設けた表を作成してくる。中には自分で項目ごとに5段階評価し、総合点を付けてくる父親も。
6角形のレーダーチャートまで作成してきたケースもあった。子どもについても、模試での各科の偏差値推移を折れ線グラフにしてくるなど、受験対策の“凝り方”は母親では見られなかった現象である。客観的な数字で学校を評価することが好きで、また得意でもある。
しかし、こうしたことに関心が集中していて、大切なことが漏れている。1つは数字にしにくい学校ごとの「生徒の育て方」や「価値観」であり、もう1つは「わが子に向いているのか」「わが子にどう育ってほしいのか」という子どもへの視線だ。
いま多くの学校では、生徒がこれからのグローバル化社会、デジタル化社会を生きていくうえで必要なスキルを身に付けさせようと、「英語教育」「ICT(情報通信技術)教育」「STEAM教育(※注)」といった分野に力を入れている。そしてこれは保護者にも歓迎されている。が、これらは遅かれ早かれそのうちみな“標準装備”となるだろう。
※注/Science(科学)、Technology(技術)、Engineering(工学)、Art(芸術)、Mathematics(数学)といった教育分野の総称。
筆者のように長年いろいろな学校と接してきた者からすると、真の学校の魅力は数字で表現されるもの、スキルの優劣ではないところにある。
「自校の生徒をきちんと見つめている」「思春期の難しさをきちんと理解している」「生徒の将来を考えて手を打っている」「いま歓迎される『面倒見』ではなく、主体性を育てるために『自立・自律』を促している」……など、日常的に工夫を積み重ねている学校に好感が持てる。父親にもぜひそうした目で学校を見てもらいたいと思う。
また、これは父親に限らないが、受験生活が始まるといきなり学校探しを始めてしまう。しかし、肝心なことはその前にわが子を見つめることだろう。
「これまで育ってきた中で、わが子はどんなことに興味があり、どんな方向に伸ばすことが向いているのだろうか?」「これからの時代、わが子に持ってもらいたい資質はどんなものか?」「自分の人生経験の中で尊敬できる人はどういう人だった?」……など、わが子を視野に入れ、育て方に視点を置いてほしいということだ。
まだ時間のある夏休みにこの2点についてご両親で考えてもらいたい。