アメリカも再びマスク生活に逆戻り(写真/アフロ)
デルタ株でワクチン効果が半減
ブレークスルー感染はどのように起きるのか。まず知っておきたいのは、ワクチンの効果は100%ではないことだ。都内在住の40代男性が振り返る。
「職域接種で早めにワクチンを打てたので安心して、接種から2週間経ってから、“闇営業”でお酒を出す盛り場に顔を出しました。抗体があるのにマスクをするのもバカらしくて、マスクは外して友人と飲食しました。
その2日後です。急に発熱やのどの痛みが生じ、念のためにPCR検査を受けたら陽性。呆然としていたら『ワクチンを打っても効かないこともあるんです』と医師に告げられてビックリしました」
インターパーク倉持呼吸器内科院長の倉持仁さんの指摘。
「ワクチンを接種しても、感染を防ぐための抗体ができない人が数%います。実際に私のクリニックで60人に2回接種したところ、抗体ができなかった人が3人いました。ワクチンを打てば絶対安心というわけではないのです」
昭和大学客員教授(感染症)の二木芳人さんは、「患者の年齢なども影響します」と言う。
「千葉大学の研究によると、高齢者は若者の半分程度しか抗体ができませんでした。そのほかにもお酒を飲む人は抗体ができにくいとの報告もありました。抗体の出来具合には個人差があることを知っておくべきです」
接種後の時間経過もポイントになる。
「2週間ほどでできる抗体は、一定期間を過ぎると予防効果が落ちていきます。特にファイザー製やモデルナ製の『mRNAワクチン』は、従来の予測よりも早めに効果が落ちるとの調査結果が出始めています」(二木さん)
米ニューヨーク州立大学などがファイザー製ワクチン接種を完了した4万4000人を対象にした調査では、効能は2回目の接種から2か月後に96%、4か月後に90%、6か月後に84%と、2か月ごとに6%ずつ減少していた。
接種直後に気を緩めることも避けたい。前述の通り、ワクチンは2回目の接種から2週間後に免疫がつくとされる。都内在住で会社員の50代女性が肩を落として言う。
「ワクチンを2回打ったから『もう大丈夫だ』と思い、それまで徹底していた手洗いや人込みを避ける対策を軽視するようになりました。リモート会議も減らし、対面の打ち合わせを増やしたり、週末は久しぶりに映画館に行ったり、ショッピングにも行きました。そしたら、急に体調を崩し、検査したら陽性でした」
ブレークスルー感染の最大の要因とされるのが、変異ウイルス「デルタ株」だ。
「現在、世界で起きているブレークスルー感染の大半は、デルタ株によるものと考えられます。いまのワクチンは、従来のコロナウイルスとアルファ株(英国由来)には効果が高かったけれど、デルタ株には明らかに効きが悪い。蔓延するウイルスが変異して、ワクチン接種後の感染が生じやすくなっていると考えるべきでしょう」(二木さん)