コロナの件も、東京オリンピックの件もしかり。いろいろと怒っている人が大勢いますが、僕に言わせれば怒ってもしょうがないことばかり。そもそも、オリンピックが成功しようがどうだろうが、自分の人生にはあまり関係ないでしょ。日本選手の金メダルラッシュ? だから何だ、いちいちうるせえって感じですよ(笑い)。
やりたくないならやらなければいい。言いたくなければ言わなくていい。ある程度年を重ねたら、自分の思うがままを生きていればいいんですよ。本書全体を通して伝わる、佐藤さんのそうした率直な物言い、清々しさが私たちをホッとさせてくれます。
みなそれぞれが、佐藤さんのように自分が生きやすいように時を過ごし、自分と違う他の人に対して文句も言わず、自足してくれれば、世界は平和になるはずです。
猫を見てください。いまだったら、連日の酷暑にも文句を言わず、家の中で一番涼しいところを見つけて、気持ちよさげに昼寝しているはずです。私は、年中泳ぎ回っていないと生きていけない“マグロ”より、猫の方がいいですね。佐藤さんも、ようやくそのような心境になられたのではないでしょうか。
【プロフィール】
養老孟司(ようろう・たけし)/1937年生まれ。医学博士、解剖学者。東京大学名誉教授。昨年心筋梗塞を発症して生死をさまよった。その経緯を綴った共著『養老先生、病院へ行く』が話題に。
撮影/江森康之
※女性セブン2021年8月19・26日号