6種目(それぞれ10点満点)の試技の合計点で争われる高飛び込みにおいて、五輪においては「軽く8位以上は期待できる」と話していた。
「大人の中に入っても、彼は6種目すべてで難易点の高い演技構成で臨むことができる。空中の姿勢などに減点される要素が少なく、入水さえ決まれば高得点が期待できる。完璧にこなすことができれば、メダルも狙えます」
当初の予定だった昨年に開催されていれば、13歳10カ月での出場となり、国内史上最年少のオリンピアン(当時)となるはずだった。
ところが、1年の延期を経て開幕した東京五輪では、スケートボードの女子ストリートで、13歳10カ月の金メダリストとなった西矢椛や、同じくスケボーの女子パークで史上最年少メダリストとなった開心那など、玉井よりも若いアスリートが大躍進した。
玉井は言う。
「若い世代が活躍してる中で、自分だけが活躍できないのは嫌だなと思っていた(笑)。まだ入賞ですけど、活躍できたほうなんじゃないかなと思います」
見事なまでの大人な受け答えが続いたので、14歳を現実に引き戻す、少し意地悪な質問をしてみたくなった。
──夏休みの課題はどうなっていますか。
笑顔で玉井は答えた。
「一応、宿題は渡されているんですけど、一学期もぜんぜん学校に行けてなくて……。宿題も『できない』と先生に言ってあるので、やらなくていいかなと(笑)」
なんとも無邪気な14歳の表情がそこにはあった。
取材・文/柳川悠二(ノンフィクションライター)
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