2001年、新宿区の戸山公園に作られていたホームレスのテント(時事通信フォト)

2001年、新宿区の戸山公園に作られていたホームレスのテント(時事通信フォト)

 筆者も偉そうなことは言えない。ただ、これまで知り合った彼らホームレスのために誤解を解きたい。「筆者」ではなく「私」として。命の選別を声高に叫ぶ者へのお願いとして。

 ホームレスの方は我が物顔で寝ているわけではありません。長い人生、ときに人は路上で寝るしかないこともあるのです。

 それを見て邪魔だとか、プラスにならないとか思うのは自由です。臭いと感じるのも自由です。心に思うだけなら、自由です。

 それで治安が悪くなるという方もいますが、ホームレスだけのせいではありません。

 ホームレスであるということは犯罪ではありません。犯罪者と同じように処刑する対象でもありません。

 ホームレスの命はどうでもいい、どちらかというといない方がいいと思うのも自由です。だからといって利益にそぐわない人間だからと殺してもいいというのはあんまりです。

 思うのは自由です。だからどうかせめて、そっとしてあげてくれませんか? 街の片隅で構いません、少し休ませてあげてくれませんか? その存在は他人のエンターテインメントでなく、ギリギリの人生を生きている方々のサバイブなのです。それすらホームレスの命はどうでもいいから許せませんか? 多くの関係者が彼らのために努力しています。ホームレスは確実に減っています。ですので、どうか命が存在することだけは認めてあげてください。どうでもいいのですから、そっとしてあげてください。

 もし、それでもホームレスは邪魔、いらない、殺せというのなら、私は以前『小山田圭吾辞任でトラウマ蘇った30代男性の告白「いじめは校内犯罪である」』で引用したハンナ・アーレントの言葉を繰り返すしかありません。

 ── 何人からも、すなわち人類に属する何者からも、君とともにこの地球上に生きたいと願うことは期待し得ないとわれわれは思う。
(ハンナ・アーレント著『イェルサレムのアイヒマン』大久保和郎訳、みすず書房)

 人の思考は自由です。頭の中で何を思っても構いません。深夜のバス停で眠りについていただけの女性や、余生を河川敷で猫と暮らしていただけの男性を、邪魔だしプラスになんないし臭いし治安悪くなるし命はどうでもいいホームレスと思うのは自由です。

 ただ、彼らの生活をおびやかすような挑発や扇動はどうか口にしないでください。危害をくわえないでください。それだけでも構いません。せめて存在を許してあげてください。

 言葉が行動に、そして運命となる前に。

【プロフィール】
日野百草(ひの・ひゃくそう)/本名:上崎洋一。1972年千葉県野田市生まれ。日本福祉大学卒業、日本ペンクラブ会員。出版社を経てフリーランス。全国俳誌協会賞、日本詩歌句随筆評論協会賞奨励賞(評論部門)受賞。『誰も書けなかったパチンコ20兆円の闇』(宝島社・共著)、『ルポ 京アニを燃やした男』(第三書館)ほか。近著『評伝 赤城さかえ 楸邨、波郷、兜太から愛された魂の俳人』(コールサック社)。

関連キーワード

関連記事

トピックス

結婚を発表した長澤まさみ(時事通信フォト)
《トップ女優・長澤まさみの結婚相手は斎藤工と旧知の仲で…》インスタ全削除の“意味深タイミング”
NEWSポストセブン
箱わなによるクマ捕獲をためらうエリアも(時事通信フォト)
「クマが人里に降りてくるのは必然」「農業は野生動物に対する壮大な餌付け」 知床・ロシアでヒグマを撮った動物写真家が語る “現代の人間に欠けている自然観”
NEWSポストセブン
11人家族の宮前家
《子ども9人“大家族のパン屋さん”》「店員さんが注文を覚えきれなくて(笑)」11人家族のインフレ“金銭事情”と、大人数子育てで培ったこと「マニュアル本は役に立たない」
NEWSポストセブン
長男・泰介君の誕生日祝い
妻と子供3人を失った警察官・大間圭介さん「『純烈』さんに憧れて…」始めたギター弾き語り「後悔のないように生きたい」考え始めた家族の三回忌【能登半島地震から2年】
NEWSポストセブン
インフルエンサーのぴきちんさん(Instagramより)
《2年連続ポストシーズン全試合現地観戦》大谷翔平の熱狂的ファン・ぴきちん、全米巡る“体力勝負”の脅威の追っかけはなぜ可能なのか
NEWSポストセブン
2024年に『ウチの師匠がつまらない』を上梓
「視聴率とれたらオレのおかげ?罰が当たるよ」三遊亭好楽さんが『笑点』メンバーや裏方に愛され続ける“お客さんファースト”  地方営業で土産を爆買いも
NEWSポストセブン
古谷敏氏(左)と藤岡弘、氏による二大ヒーロー夢の初対談
【二大ヒーロー夢の初対談】60周年ウルトラマン&55周年仮面ライダー、古谷敏と藤岡弘、が明かす秘話 「それぞれの生みの親が僕たちへ語りかけてくれた言葉が、ここまで導いてくれた」
週刊ポスト
小林ひとみ
結婚したのは“事務所の社長”…元セクシー女優・小林ひとみ(62)が直面した“2児の子育て”と“実際の収入”「背に腹は代えられない」仕事と育児を両立した“怒涛の日々” 
NEWSポストセブン
松田聖子のものまねタレント・Seiko
《ステージ4の大腸がん公表》松田聖子のものまねタレント・Seikoが語った「“余命3か月”を過ぎた現在」…「子供がいたらどんなに良かっただろう」と語る“真意”
NEWSポストセブン
(EPA=時事)
《2025の秋篠宮家・佳子さまは“ビジュ重視”》「クッキリ服」「寝顔騒動」…SNSの中心にいつづけた1年間 紀子さまが望む「彼女らしい生き方」とは
NEWSポストセブン
初公判は9月9日に大阪地裁で開かれた
「全裸で浴槽の中にしゃがみ…」「拒否ったら鼻の骨を折ります」コスプレイヤー・佐藤沙希被告の被害男性が明かした“エグい暴行”「警察が『今しかないよ』と言ってくれて…」
NEWSポストセブン
国分太一の素顔を知る『ガチンコ!』で共演の武道家・大和龍門氏が激白(左/時事通信フォト)
「あなたは日テレに捨てられたんだよっ!」国分太一の素顔を知る『ガチンコ!』で共演の武道家・大和龍門氏が激白「今の状態で戻っても…」「スパッと見切りを」
NEWSポストセブン