志村さんの愛犬・殿くん(志村さんのインスタグラムより)
しばらくは定位置だった書斎ではなく、玄関に座り続けた。そこはいつもなら毎晩、「ただいま」という明るい声とともに、志村さんが帰ってくる場所──そこで1週間も待ち続けたが、帰ってくることがないと悟ったのだろう。部屋の中で尻尾を下げたまま、じっと遠くを見つめるようになった。
こんな姿も見られた。新型コロナの陽性が判明した後、志村さんの寝室は感染リスクがあることから閉め切られていた。殿くんにとって、寝室は大好きな主人に甘えられる特別な場所。ドアが開いた一瞬のすきに寝室に入り込んだ。
「ここならパパがいるかもしれない」
と考えたのだろうか。しかし、そこに大好きな志村さんの姿はない。加えてベッドはすでに消毒済み。殿くんは、主人の残り香を探すようにして必死に布団を堀り、その上から動かなかった。
不安と苛立ちからか、殿くんはチロくんとけんかをすることが増え、エサや水も拒否するように。獣医師は、“志村さんの後を追う気なのでは”と心配した。その後、殿くんの新たな住まいとなったのは、志村さんの家政婦の1人である星野初弥さんの自宅だ。
「志村さんは生前、“自分にもしものことがあったら、この2匹を頼む”と、星野さんをはじめ家政婦さんたちに話していたんです。彼女は、家政婦の1人にすぎない自分が引き取っていいものか悩んだそうですが、志村さんの所属事務所や息子さんたちの後押しもあり、引き取ることを決意。チロくんも広島県の星野さんの実家で穏やかに暮らしています」(志村さんの知人)
「血液のがん」が発覚
志村さんが2匹をかわいがるのを間近で見ていた星野さんはめいっぱい愛情を注いだ。
「引き取った当初、殿くんはやせ細っていて、足取りもヨロヨロとしていました。でも、星野さん一家が懸命に声をかけ続け、エサを食べるようになった。尻尾もピンと上がり、砂浜を走り回れるほど、元気を取り戻しました」(前出・テレビ局関係者)
昨年夏、回復した殿くんのもとに真っ先に駆け付けたのは、相葉雅紀(38才)だった。『天才!志村どうぶつ園』に出演し、後継番組の『I LOVE みんなのどうぶつ園』(日本テレビ系)で、MCを務める相葉は、志村さんの“忘れ形見”ともいえる殿くんとの対面を切望していたという。
「対面には、『I LOVE みんなのどうぶつ園』のカメラが密着。警戒心が強い殿くんは、知らない人にかみつくこともあった。しかし、相葉さんといるときは、リラックスした表情を浮かべていた。相葉さんは殿くんの細い体をなでながら、涙をこらえているように見えました」(前出・テレビ局関係者)
相葉は番組で習得したトリミングの技術を生かし、殿くんのシャンプーに挑戦した。
「殿くんはこのときも、嫌がらずにすんなり洗わせてくれた。相葉さんは『(ぼくが)園長の舎弟だって伝わったのかな?』とうれしそうな表情を浮かべていました。『園長が天国で絶対見守っているからね。長生きするんだよ』と声をかけていたのですが……」(前出・テレビ局関係者)