今春、殿くんがかつてのような元気を取り戻したかのように思えた矢先のこと、血液のがんである「悪性リンパ腫」が見つかったのだ。茶屋ヶ坂動物病院の獣医師、佐藤恵一さんはこう解説する。
「飼い主が亡くなってしまうことで、犬が体調を崩すことはよくあります。生活環境の変化や、寂しさからくるストレスが原因だと思われます。私が診たなかでも、飼い主が亡くなって数か月後にがんが見つかった犬がいました。殿くんの場合、志村さんと過ごす時間が、なによりの楽しみだったのでしょう。飼い主への愛情が大きいほど、ストレスが大きくなると考えられます」
見つかったリンパ腫は初期段階のものだった。殿くんは今年で10才。老犬期にさしかかる年齢ではあるが、15才ほどまで生きる豆柴もいる。星野さんは完治を目指し、毎日のように動物病院に通って治療を受けさせた。だが、病気は徐々に進行。飛び跳ねるようにして大好きな散歩に行く日もあったが、体調が優れず一日中寝ていることが一日、また一日と増えていった。
「お盆に入ってからかな、星野さんから“殿くんが亡くなりました”と知らせがありました。殿くんのお骨はあちらで大事にしていただければと思っています」(知之さん)
少し早い殿くんの到着に志村さんは驚くかもしれない。しかし彼はこう言うだろう。
「よくきたね。もうずっと離れることはないよ」
※女性セブン2021年9月2日号