芸能

一人三役務めた前田敦子 場の支配力と存在感は“元センター”の為せる技

atsuko

NODA・MAP初参加にして一人三役を演じた前田敦子

 7月末までに上演され話題を呼んだ高橋一生(40才)主演の舞台『フェイクスピア』。コロナ禍の中でも連日大きな反響を呼び、SNSなどの口コミでも、実際に観劇した人たちの感動の声が多く並んだ。その中でも特に注目を集めていたのが、出演者の1人である前田敦子(30才)だ。その理由について、映画や演劇に詳しいライターの折田侑駿さんが解説する。

 * * *
 東京から大阪へと上演場所を移し、全62公演、約2か月にわたる長丁場のスケジュールで上演された『フェイクスピア』。「過去と現在」、「虚構と現実」を自在に往還する演劇ならではのイマジネーション溢れる作品となった。主演の高橋をはじめとする手練れの演者陣への称賛の声が多く聞かれたなか、高い評価を得ていたのが本作で三役を務める前田敦子の活躍だ。

 離婚や所属事務所からの独立など、プライベートばかりが取り沙汰される彼女だが、ステージ上の前田を目にした観客の反応は正直だ。「場の支配力と存在感が凄くて、登場の度に空気が変わる」なんて声もあった。これには筆者も完全に同意。橋爪功(79才)や白石加代子(79才)らと並んで芝居に挑む前田の姿からは、様々な経験経て来た彼女のキャリアが活きているように感じたし、これからの前田の更なる飛躍を予感させるものだったのである。

 本作は、劇作家であり演出家の野田秀樹(65才)率いる「NODA・MAP」の最新作。主演にNODA・MAP初参加の高橋を迎え、イタコが存在する青森・恐山を舞台に、ここを訪れる者たちの不可思議な交流が展開していく。題材として扱われるのは、現実の日常でも日々巻き起こる“言葉”の問題。これまでの野田作品と同様に、いまの時代に鋭くメスを入れながらも、この時代をサバイブする人々に向けた希望を描いている。過去と現在、虚構と現実とが交錯し、“言葉”にまつわる壮大な寓話が展開していくのだ。

 世界的に評価される野田作品とあって、キャスティングも素晴らしい。舞台経験は豊富ながらも野田作品に初めて挑む高橋をはじめ、軽快に舞台上を動き回る大ベテランの橋爪と白石は「役者という生き物に年齢はないのか」と思わせるほど。さらには、川平慈英(58才)や伊原剛志(57才)、村岡希美(50才)といった名優たちが作品を支えている。いずれも申し分無いキャリアを誇るプレイヤーたちだ。代わる代わるステージ上に姿を見せる彼らは、一人ひとりが得も言われぬ安心感を放っていた。

 このメインキャストの中で最年少であり、NODA・MAP初参加の前田が演じるのは、なんと三役。“伝説のイタコ”、“星の王子様”、“白い烏”と、いずれも抽象的なキャラクターで、物語の大事な転換時に必ず登場する。演じるキャラクターが変わるごとに、表情も声色もころころと変化し、特に彼女のよく通る声が印象的だった。それは時に豪快で野太く、また時には鋭敏で軽やかだ。

関連キーワード

関連記事

トピックス

山下市郎容疑者(41)はなぜ凶行に走ったのか。その背景には男の”暴力性”や”執着心”があった
「あいつは俺の推し。あんな女、ほかにはいない」山下市郎容疑者の被害者への“ガチ恋”が強烈な殺意に変わった背景〈キレ癖、暴力性、執着心〉【浜松市ガールズバー刺殺】
NEWSポストセブン
英国の大学に通う中国人の留学生が性的暴行の罪で有罪に
「意識が朦朧とした女性が『STOP(やめて)』と抵抗して…」陪審員が涙した“英国史上最悪のレイプ犯の証拠動画”の存在《中国人留学生被告に終身刑言い渡し》
NEWSポストセブン
早朝のJR埼京線で事件は起きた(イメージ、時事通信フォト)
《「歌舞伎町弁護士」に切実訴え》早朝のJR埼京線で「痴漢なんてやっていません」一貫して否認する依頼者…警察官が冷たく言い放った一言
NEWSポストセブン
降谷健志の不倫離婚から1年半
《降谷健志の不倫離婚から1年半の現在》MEGUMIが「古谷姓」を名乗り続ける理由、「役者の仕事が無く悩んでいた時期に…」グラドルからブルーリボン女優への転身
NEWSポストセブン
橋本環奈と中川大志が結婚へ
《橋本環奈と中川大志が結婚へ》破局説流れるなかでのプロポーズに「涙のYES」 “3億円マンション”で育んだ居心地の良い暮らし
NEWSポストセブン
10年に及ぶ山口組分裂抗争は終結したが…(司忍組長。時事通信フォト)
【全国のヤクザが司忍組長に暑中見舞い】六代目山口組が進める「平和共存外交」の全貌 抗争終結宣言も駅には多数の警官が厳重警戒
NEWSポストセブン
遠野なぎこ(本人のインスタグラムより)
《前所属事務所代表も困惑》遠野なぎこの安否がわからない…「親族にも電話が繋がらない」「警察から連絡はない」遺体が発見された部屋は「近いうちに特殊清掃が入る予定」
NEWSポストセブン
放送作家でコラムニストの山田美保子さんが、さまざまな障壁を乗り越えてきた女性たちについて綴る
《佐々木希が渡部建の騒動への思いをストレートに吐露》安達祐実、梅宮アンナ、加藤綾菜…いろいろあっても流されず、自分で選択してきた女性たちの強さ
女性セブン
(イメージ、GFdays/イメージマート)
《「歌舞伎町弁護士」が見た恐怖事例》「1億5000万円を食い物に」地主の息子がガールズバーで盛られた「睡眠薬入りカクテル」
NEWSポストセブン
和久井学被告が抱えていた恐ろしいほどの“復讐心”
【新宿タワマン殺人】和久井被告(52)「バイアグラと催涙スプレーを用意していた…」キャバクラ店経営の被害女性をメッタ刺しにした“悪質な復讐心”【求刑懲役17年】
NEWSポストセブン
幼少の頃から、愛子さまにとって「世界平和」は身近で壮大な願い(2025年6月、沖縄県・那覇市。撮影/JMPA)
《愛子さまが11月にご訪問》ラオスでの日本人男性による児童買春について現地日本大使館が厳しく警告「日本警察は積極的な事件化に努めている」 
女性セブン
女優・遠野なぎこの自宅マンションから身元不明の遺体が見つかってから1週間が経った(右・ブログより)
《上の部屋からロープが垂れ下がり…》遠野なぎこ、マンション住民が証言「近日中に特殊清掃が入る」遺体発見現場のポストは“パンパン”のまま 1週間経つも身元が発表されない理由
NEWSポストセブン