大阪桐蔭(大阪)時代の中田翔選手。帽子のツバを曲げていた(時事通信フォト)
今宮の場合は、ツバだけでなく帽子のロゴ部分など帽子全体に極端な「型付け」しているのも特徴で、帽子の形が完全に変形し、頭の上にちょこんと乗っかったスタイルが、高校野球フリークの間で話題となった。今宮に憧れて、帽子を無茶苦茶な形に型付けしている中高生も多かったことを筆者は記憶している。今宮はプロ入り後も、それほど極端なものではないが「ツバ曲げ」帽子を着用し続け、そのこだわりが伺える。
最近の高校球児の帽子がどうかというと、ツバは若干湾曲しているか、もしくは真一文字に真っ直ぐにしている例も散見される。これが最新の高校野球トレンドなのか。だとしたら、そのトレンドはなぜ生まれたのか。神奈川県内の県立高校野球部でコーチを務める中原幸雄さん(仮名・50代)が、持論を展開する。
「高校球児が見た目でアピールできる部分といえば、帽子のツバくらいでしょう(笑)。それでなくとも、球児は野球漬けで、野球界以外の価値観を知らない場合もある。野球界という限定的な世界の中では、ツバ曲げがかっこいいとされていたんでしょう。金ネックレスや派手なセーターがプロ野球選手に好まれるみたいなもんかな。強豪校や、やんちゃな生徒が多い高校のチームの選手ほど、そうした傾向がありました」(中原さん)
しかし、中原さんの最近の教え子に、極端なツバ曲げをする選手はいない。
「帽子を頭にフィットさせるためツバを曲げる子もいますし、守備の際にはツバの形状によってボールの見えやすさが変わる、なんて意見もあるでしょう。一方で全く曲げないことが『かっこいい』という子もいる。また、最近の大リーガーや日本のプロ野球選手でも、ツバを一切曲げない選手も少なくないです」(中原さん)
千葉県内の強豪校に在籍する現役高校球児・中村裕翔さん(仮名・16歳)によれば、チーム内にはツバ曲げ派と真っ直ぐ派、それに購入した時のままの自然な感じに湾曲したツバの形状を保ち使うという「三派」が存在するというが、やはり「極端」派はほぼいないという。
「地方の強豪校選手の帽子が曲がっているな、と思うことはありますけど、人それぞれって感じです。あんまりやりすぎると、テレビ中継で目立ってしまい、SNSにあげられてネタにされるんじゃないかと思いますけど(笑)。高校時代の今宮選手の帽子……、すごいですよね(笑)。イキってるけど上手いし、チームのリーダーって感じ。投球するたびに帽子が落ちたりして、審判に注意されることはなかったんですかね……」(中村さん)