孤立するニュータウンの未来
今はまだ、五輪の熱気が晴海フラッグの周辺を漂っているが、それも数か月で霞み始め、1年も経てば記憶のひとつでしかなくなる。3年経てば、完全に過去の話である。
このように晴海フラッグのマンションとしての資産価値を冷静に眺めてみると、かなり危ういものがある。仮に2024年3月時点で1000戸以上も残っていれば、完売するまでにはそのあと何年もかかるはずだ。それは、いつまでに完売できるかという「限界への挑戦」である。
これだけ話題を集めている物件だけに、そう簡単に表立っての値引きには踏み込めないだろう。それに、値引き販売は売り主10社すべてが同意する必要がある。その手続きを考えるだけでも、販売担当者は胃が痛くなるはずだ。
さらに恐ろしいのは、購入された方が築10年くらいのタイミングで売却しようとした場合だ。
まず、毎日駅への往復に1時間もかかる中古マンションを、誰が選ぶのか。そもそも不動産ポータルサイトで中古マンションを探す人が、「駅徒歩15分超」のボタンを押してくれるとは思えない。賃貸に出す場合は、さらに駅から遠いことがハンディキャップとなる。
「敷地内にスーパーがある」とか「小学校が新設される」といったことが魅力になったのは平成の前半ころまでの話だ。ニュータウンの小学校は20年で統合される。
ニュータウン型開発は最初の数年こそ華やかだが、10年も経てば街がしおれ始め、20年、30年も経てば住人は高齢化し、建物は老朽化している。住む人が入れ替わって新陳代謝できるのは、交通利便性の良いところに開発された物件に限られる。
晴海フラッグは東京都中央区の端っこで孤立するニュータウンである。地下鉄でも通さない限り、未来は決して明るくない。