【4】パサート(フォルクスワーゲン)
2015年、ディーゼルの排出ガス計測の不正が露見したことでブランドイメージを大きく落としたフォルクスワーゲン。現在は欧州を中心に電気自動車への転換を図っているが、車両重量の大きなクラスでは依然として顧客がディーゼルを求めていることから、今も多様なディーゼルエンジンをラインナップしている。
日本に来ている同社のディーゼルで最も強力なのは、Dセグメント(ミッドサイズ)セダン/ステーションワゴン「パサート」に搭載されている最高出力140kW(190ps)の2リットル直列4気筒ターボ。このエンジンはディーゼル技術の盟主からダーティな企業へとイメージを大暴落させてしまったフォルクスワーゲンの意地の一発という感があった。
尿素SCRという排出ガス浄化装置を排気システムの上流と下流に二段配置し、低負荷から高負荷まで安定して有害物質を分解する。こんな高コストの浄化装置を積んで大丈夫かと思うくらいの変貌ぶりだ。
欧州市場では2リットルツインターボ240psがディーゼルの最強版で、190psエンジンはそれに比べればフツーだろうと予想してドライブをしてみたところ、スポーツディーゼル感満載。
中高回転まで回した時のサウンドは同社のガソリンターボ、旧型「ポロGTI」に似た、“キイィーン”という金属音が交じるレーシーなもので、咆哮と言ってもいいかっこよさ。また、レッドラインの5000rpmまでの回転上がりも素晴らしい切れ味だった。
燃費も過去に乗ったDセグメントディーゼルの中では最良で、市街地、郊外、高速の全ステージでWLTCカタログ燃費を大幅に上回った。3800km走ってみたなかでの長距離走行時の実測燃費では普通に走って22km/L、ベストスコアは25.4km/L。クルマの特性をある程度把握して走れば、混雑した市街地でも実測で15km/Lを下回ることはなかった。
今どきの同クラスの中ではパワートレインの振動、騒音が大きいという欠点はあるが、高性能ディーゼルを今のうちに味わっておきたいというユーザーにとっては、ステーションワゴン「パサート ヴァリアント」含め、一考に値するクルマだった。