【1】CX-30(マツダ)
最初に紹介するのは車幅や車高制限のきつい旧式の立体駐車場に入れられるサイズが売りのマツダのコンパクトSUV「CX-30」だ。
マツダは日本メーカーの中ではディーゼルのラインナップが最も幅広く、オープンスポーツ「ロードスター」、「MX-30」を除く全自社製モデルにディーゼルを用意しているが、その中でCX-30をピックアップした理由は、今流行りのSUVであることと、2.2リットル、1.8リットル、1.5リットルの3種類があるマツダのディーゼルの中で最も設計が新しく、静粛性、パワー、経済性のバランスが断然優れている1.8リットルを搭載していることだ。
この1.8リットルディーゼルは2018年にCX-30よりひとまわり小さい「CX-3」に初搭載された。筆者は同年、CX-3の6速MTモデルで東京~鹿児島を3200kmほどドライブしてみたのだが、このエンジンは実力的に十分ワールドクラスだった。
まずは経済性だが、ロングラン、市街地とも非常に燃費が良く、市街地、郊外路、高速道路の各ステージでカタログ値であるWLTC燃費値を大幅に上回るスコアを記録した。
最も燃費が良かったのは福岡北部の門司から神奈川の茅ヶ崎まで郊外路と高速道路を併用しながら山陰経由で走った1132.8km区間。燃費を出そうとシャカリキに低速走行したわけではなく、結構いいペースで走ったにもかかわらず実測27.9km/Lだった。ガソリン車に換算すると24.7km/L相当のCO2排出量である。
また、市街地が大半を占めた区間では17km/L、郊外路主体で23~25km/L。この燃費のおかげで3200kmドライブ中、最終目的地を除く途中給油はわずか3回ですんだ。
優れていたのは燃費ばかりではない。スロットルを踏み込んだときの柔らかで、それでいて力感豊かな反応、他のマツダ製ディーゼルと比べても傑出した低騒音、低振動も好感が持てたポイントだった。
CX-30の1.8リットルは車両重量が大きい分、最高出力がCX-3の85kW(116ps)から95kW(130ps)へと増強されているが、燃費、パワーなどの特性はほぼ変わらないだろう。車内や荷室の広さはCX-3の比ではなく、ファミリーユースへの適合性は高い。
最近、すっかり悪者扱いされているディーゼルだが、アイドリングストップ以外の電動化要素ゼロでこれだけの性能と経済性を出せる高効率はディーゼルならでは。技術革新によるさらなる低公害化や低コスト化に期待がかかるところだったが、世界は技術革新のほうではなくディーゼル潰しを経て内燃機関そのもののフェードアウトというルール作りに向かっている。
そんな状況の中、「今この瞬間、実走行でこれより低CO2のSUVに乗っている人だけが文句を言え」と言える低公害なCX-30は、ディーゼル車の特性を今のうちに満喫しておきたいユーザーにはとても良い選択肢と言えるだろう。