高校時代は、決して強豪とはいえないサッカー部で汗を流した安彦。だが、高3でプロを目指すとブラジルにサッカー留学し、ケガで試合に出場することはなかったが、実際にプロ契約を勝ち取った。
帰国後は1度はサッカーを諦め、約15年にわたり一般の仕事に従事。それでも、夢を捨てきれずに39歳ですべての仕事を辞めてJリーガーを目指した。40歳でJリーガーとなった安彦は、3年間の選手生活を昨季限りで終えると、こんどは格闘家へ大きく舵を切るなど、そのキャリアはどこまでも異色だ。
格闘家としては4月に同イベントでデビューすると、元K-1日本王者の小比類巻貴之氏の運営するジムを中心にトレーニングを行ない、5月には元ライト級東洋太平洋王者の中谷正義(32、帝拳)から、7月にはボクシングジム「GLOVES」代表で、キックボクサーの那須川天心(22、TARGET/Cygames)を指導したこともある元東洋太平洋ジュニアフェザー級(現スーパーバンタム級)王者の葛西裕一氏からアドバイスをもらうなど、わずか半年のキャリアながら心身ともに急成長。大会前には自身の第2のルーツともいえるブラジル発祥のカポエイラも練習に取り入れるなど、できることは貪欲に何でも取り入れてきた。
「次は(プロとして)RIZINを目指せるかどうかですが、そこはRIZINがどういう判断をしてくれるか。(アマチュアで2連勝し)一歩近づいたことは間違いないですが、ここからが大変。ただ、RIZINに出ることが目標ではなく、その過程で人間の可能性を提示することが僕の目指すことだから。
43歳で格闘技を始めた理由はそこで、別にチャンピオンを目指しているわけでなく、僕の生き様が誰かの勇気や元気につながってくれたらうれしい。もちろん、そのメッセージを発信するためには高いステージが必要で、それがRIZINということ。年齢を考えれば悠長にはしていられないし、来年、再来年があるとも思っていない。自分にとってはJリーガーを目指してテストを兼ねたキャンプに参加していた頃と同じ崖っぷちの状態。自分で選んだ道のくせに何を言っているんだって話ですが、まったく楽できないですよ(笑)」