2020年の「第40回さっぽろホワイトイルミネーション」。新型コロナウイルス終息の願いも込めて開幕。医療従事者に感謝を込めて一部は青い光で装飾されていた(時事通信フォト)

2020年の「第40回さっぽろホワイトイルミネーション」。新型コロナウイルス終息の願いも込めて開幕。医療従事者に感謝を込めて一部は青い光で装飾されていた(時事通信フォト)

「何千人も集めてお酒飲んでマスク無しで絶叫するなんて、毎日患者さんの命を見続けている側からしたら絶望しかありません」

 この部分だけ、8月30日に彼女からメールで届いた後追いだが、愛知県常滑市で28日、29日と開催された野外音楽イベント「namimonogatari2021」のことだ。5000人を超える大集団が絶叫の大合唱、酒類も提供されての乱痴気騒ぎとなった。マスクの着用も無視する者が多く、常滑市長は「きわめて悪質なイベント」と断じた。それ以外にも散々報じられた新潟県湯沢町の「FUJI ROCK FESTIVAL ’21」はもちろん、不織布マスクNGで当初は酒持ち込みOKだった群馬県片品村の「GLOBAL ARK2021」などが批難された。この体たらく、医療関係者にとっては絶望しかないだろう。

「それでも私は自分のできることをするだけです。現場で命を救うだけです。ただそれだけです。でも、経営が厳しい状態なのに受け入れ続ける病院、そして仲間を悪者にはされたくありません」

 看護師さんは夜勤明け、「本当に頭が下がる」なんて通り一遍の言葉では足りないほどに、医療関係者の方々には感謝しかないし申し訳なく思う。多くの一般国民も医療の最前線やそれを支えるエッセンシャルワーカーの方々に感謝している。しかし国は、都は新しい分断の手口として、ついに聖域である医療機関とその関係者を魔女狩りのターゲットにしようとしている。

「お願いします。どうか悪者にはしないでください。私たちはできる限りのことをしていますし、これからもします。私たちは味方です」

 みなさんに伝えてほしいメッセージとのことでそのまま載せる。私たちは決して為政者とその尻尾の手口に乗って、彼らを悪人に仕立ててはいけない。万が一、決定通りに医療機関の名前を晒すことがあるなら、そんなことをする政府と都こそ悪人なのだ。医療にも限界はある。医師会や上部団体の問題もある。しかし私たちの命を本当に救ってくれるのは医療機関の彼らしかいない。彼らは私たちの味方だ。

「あのブルーインパルス、なんだったんですかね。なんだかんだ言われてましたけど、私は嬉しかったですよ」

 昨年5月、医療従事者に感謝すると称して飛んだブルーインパルス、言うことを聞かない医療機関名を晒し者にする今となっては、確かにあれはなんだったのか、である。

 嬉しかった、そんな看護師さんの寂しそうな声に、胸が押しつぶされそうになった。言うことを聞かなければ病院名を晒す ―― こんな行為は決して許されない。あまりに酷い。

【プロフィール】
日野百草(ひの・ひゃくそう)/本名:上崎洋一。1972年千葉県野田市生まれ。日本ペンクラブ会員。出版社を経てフリーランス。全国俳誌協会賞、日本詩歌句随筆評論協会賞奨励賞(評論部門)受賞。『誰も書けなかったパチンコ20兆円の闇』(宝島社・共著)、『ルポ 京アニを燃やした男』(第三書館)。近著『評伝 赤城さかえ 楸邨、波郷、兜太から愛された魂の俳人』(コールサック社)。

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